日経平均は6月22日に史上最高値7万2831円をつけた後、AI・半導体銘柄を中心に調整局面へ。
「今買うべきか」と問われて「今でしょう」とは言いにくい——プロがそう語る理由は、過去30年のデータが示す「7・8・9月ワーストスリー」という季節性にありました。
前半はフィリップ証券リサーチ部長・笹木和弘氏が、シリコンサイクル・スーパーサイクル論・季節性・セクターローテーションという4つの視点から、年後半の日本株戦略を体系的に解説。後半は経済アナリスト・田嶋智太郎氏が、猛暑到来で注目度が急上昇する「出遅れサービス業」銘柄を具体的な証券コードとともに紹介します。ラウンドワン・イオンファンタジー・オリエンタルランド——夏相場の主役候補が続々登場する実践的な回です。
🎙 番組概要
- 番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
- 放送日:2026年7月23日(木)
- 提供:フィリップ証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
- パーソナリティ:浜田 節子 氏
- コメンテーター:
- 前半:笹木 和弘 氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
- 後半:田嶋 智太郎 氏(経済アナリスト)
前半テーマ:相場のサイクルと季節性——「今買うべきか」への理論的な答え
シリコンサイクルは「すでに3年半超」——ピークアウトはあり得るか
年初の時点で笹木氏は「2026年の日本株は相場格言通り、後半が前半より弱い尻下がりになる可能性がある」と予想していました。日経平均が史上最高値をつけた後に調整している現在の相場は、その見立てに沿った展開とも言えます。
ヴェストラその根拠の一つが景気循環の波です。
笹木:在庫調整を要因とするキチンの波、あるいは半導体のシリコンサイクルは3年半から4年程度の周期とされています。生成AIのChatGPTが登場した2022年11月ごろがサイクルの底だったという見方が有力ですので、すでに3年半を超えています。短期的には一旦ピークアウト局面があってもおかしくないと思います。
📌 用語解説:キチンの波・シリコンサイクルとは
キチンの波は約40ヶ月(3年半前後)周期の短期景気循環で、企業の在庫投資の増減が主因とされる。半導体業界ではこれに対応する「シリコンサイクル」と呼ばれる好不況の波が観測されており、需要拡大→増産投資→供給過剰→在庫調整→需要回復というサイクルを3〜4年で繰り返してきた。サイクルの「起点」をどこに置くかで現在位置の解釈が変わるため、プロは複数の起点仮説を持って相場を見ている。
スーパーサイクル論の正しい理解——「谷が消える」のではなく「谷が浅くなる」
一方、市場では「AIデータセンター投資による構造的特需で、従来のサイクルを超えたスーパーサイクルに入っている」という強気論も根強くあります。笹木氏はこの見方を全否定せず、精緻に整理しました。
笹木:大手の半導体製造装置メーカーからも、AI需要がシリコンサイクルの谷を打ち消すという声が上がっていますし、半導体メモリの供給不足も数年は続くと見られています。サイクルの谷が小さくなるという点では、スーパーサイクル論が当てはまると思いますが、従来のサイクルが完全に消滅するわけではありません。過大な設備投資に対する収益化の遅れ、あるいは電力インフラの制約から投資のペースが予想を下回るといったリスク要因もありまして、何らかの形で減速局面が来ることも考えられます。
「業績見通しに弱気になる必要はない。それでも今買うべきかと問われると、今でしょうとはなかなか言いにくい」——この絶妙なニュアンスの理由が、次の「季節性」です。
過去30年のデータが語る「7・8・9月ワーストスリー」
笹木:1996年から2025年までの過去30年間の日経平均株価で、月間騰落率の平均を見ますと、7月が12ヶ月のうちブービーの11番目、8月が最悪の12番目、そして9月が10番目と、ワーストスリーが7・8・9月に集まっているわけですね。
その背景も明快です。夏休み・お盆休み・シルバーウィークで経済活動自体が低下しがちなうえ、機関投資家の運用担当者も長期休暇前にポジションのリスク量を落とす調整を行うため、「夏枯れ相場」になりやすいのです。
一方でパフォーマンスが良い月は——
| 順位 | 月 | 背景 |
|---|---|---|
| 1位 | 11月 | 不透明感の払拭・年末相場への助走 |
| 2位 | 6月 | 配当支払い・夏のボーナス流入 |
| 10〜12位 | 7・8・9月 | 夏枯れ・機関投資家のリスク調整 |
笹木:過去の平均的な季節性からしますと、焦って今買わなくても、9月から10月ぐらいに買っておけばパフォーマンスを上げやすいんじゃないかと言っても、あながち言い過ぎではないと思います。
注目すべきは、この傾向が日本株固有ではないことです。S&P500でも過去30年の月間騰落率は8月が11番目・9月が12番目、そして11月がベストと、日米で完全に共通しています。
さらに今年は11月上旬に米中間選挙を控えます。選挙前は不透明感が高まりやすく、11月以降に払拭されれば買いが戻りやすい——「今年は年末まで過去の平均に近い形になるのではないか」というのが笹木氏の予想です。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年7月16日放送(川口一晃氏)では一目均衡表の値幅計算から「日経平均7万9000円台の可能性」が示されました。今回の笹木氏の季節性分析と重ねると、「夏場の調整(7〜9月)を経て、中間選挙通過後の11月から年末にかけて上値を試す」というシナリオが両者の見方を矛盾なくつなぐ形になります。目標値(川口氏)とタイミング(笹木氏)——2週分の放送を合わせることで、年後半の戦略マップがより具体的になります。
セクターローテーションの本質は「攻めから守りへ」のシフト
AI・半導体からそれ以外の銘柄への資金移動(セクターローテーション)が相場を支えるという見方について、笹木氏は運用者の行動原理から独自の解釈を示しました。
笹木:機関投資家やファンドの多くは、6月末までの前半戦で、AI・半導体銘柄といった市場全体の動きと比べて感応度が高い、いわゆるベータ値の高い攻撃的な攻めのポートフォリオで十分な収益を上げたのではないかと考えられます。そうなりますと、7月からの後半戦は、ベータ値の低い守備的なポートフォリオにシフトして、1年間の勝利を確実にしようと考えるのは当然なんじゃないかと思います。サッカーのワールドカップでも、前半戦で大量リードすれば後半戦でフォワードを引っ込めてディフェンダーに切り替えるといった采配がよく見られますけれども、考え方は似たようなものでしょう。
📌 用語解説:ベータ値とは
市場全体(指数)の動きに対する個別銘柄・ポートフォリオの感応度を示す指標。ベータ1.5の銘柄は市場が10%上がると15%上がり、10%下がると15%下がる傾向を持つ。AI・半導体などの成長株はベータが高く「攻め」に、食品・電力・通信などのディフェンシブ銘柄はベータが低く「守り」に分類される。年間成績で評価される機関投資家は、リード時に低ベータへ切り替える「逃げ切り戦略」を取ることがある。
この視点から導かれる重要な帰結が、指数への影響です。
笹木:セクターローテーションの本質は、高ベータの高リスクポートフォリオから低ベータの低リスクポートフォリオへのシフトです。ただ、それはAI・半導体銘柄のウエイトが高い日経平均株価にとっては下落要因となる可能性が高いのではないかと思います。
一方、TOPIXには追い風の材料があります。10月から始まる指数見直しに伴う銘柄入れ替えで、新規組入れ候補のスタンダード・グロース市場銘柄や、浮動株比率が引き上がったプライム銘柄が資金シフトの受け皿になる可能性がある——「日経平均よりTOPIX」という相対観です。
📌 投資視点まとめ
- シリコンサイクルは起点(2022年11月)から3年半超——短期ピークアウトは想定内に
- スーパーサイクル論は「谷が浅くなる」が正解、「谷が消える」は誤読
- 過去30年の季節性では7・8・9月がワーストスリー、買い場は9〜10月が統計的に有利
- 機関投資家の「後半戦は守り」行動が高ベータ銘柄(AI・半導体)の重石に
- 日経平均よりTOPIX優位の展開も——10月の指数見直しで新規組入れ候補に注目
フィリップ証券からのお知らせ


ファイナンシャルジャーニーでは現在リスナーアンケートを実施中です。番組の感想・ご要望をお送りいただいた方の中から抽選で30名様に、フィリップ証券ロゴ入りモレスキン特製ノートをプレゼント。締め切りは7月31日(金)です。詳しくはラジオNIKKEI「ファイナンシャル・ジャーニー」番組サイトをご覧ください。この夏、番組開始4年目に突入したファイナンシャル・ジャーニーを今後ともよろしくお願いいたします。
当社が取り扱う商品等には、価格変動等により元本損失・元本超過損が生じるおそれがあります。投資にあたっては、契約締結前交付書面等を必ずお読みください。フィリップ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第127号



応募はコチラまで!
後半テーマ:猛暑到来——出遅れ「サービス業」銘柄に妙味あり


業種別騰落率で見える「サービス業33%上昇」の存在感
梅雨明けと同時に到来した激アツの夏。田嶋氏はこの猛暑を投資テーマとして読み解きました。
まず注目したのが、TOPIX業種別指数(33業種)の年度初来パフォーマンスです。
| 業種 | 4月1日〜先週末の上昇率 |
|---|---|
| 電気機器 | 34% |
| サービス業 | 33% |
| 銀行 | 26% |
| ガラス・土石製品 | 22% |
| 情報通信 | 15% |
| 精密機器・非鉄金属 | ほぼ値上がりなし |
田嶋:特に目立った値上がりを見せているのがサービス業です。サービス業の業種別指数は、2000年2月につけた史上最高値4197ポイント以来の高値圏にあって、直近21日に3900ポイント台。もう少し頑張れば史上最高値を更新するというところまで値上がりしてきています。
AI・半導体関連に買い疲れ感が出てボラタイルな展開となる中、出遅れ銘柄への物色が広がり、その中心にレジャー関連の見直し買いがあるという構図です。
サービス業に追い風が吹く3つの理由
田嶋:まず、インフレが進む物価高の状況の中で、各企業がサービス価格・製品価格の値上げをしやすい、価格転嫁を進めやすい状況にあること。実質賃金が5月時点で5ヶ月連続プラスとなっていて、賃金が上昇し続けていること。さらに、今夏のボーナスは全産業平均で5年連続過去最高を更新し、最終集計で初の平均100万円超えという状況ですから、相応にお財布のひもも開きやすくなっていて、これがサービス業に向かっている可能性もありますよね。
①価格転嫁のしやすさ、②実質賃金のプラス転換、③過去最高のボーナス——消費の追い風が揃った上に、猛暑が「涼しい室内レジャー」への需要を押し上げるという特需構造です。
注目銘柄①:ラウンドワン(4680)——猛暑・値上げ・米国IPOの三拍子
田嶋:ボウリングとかカラオケ、ゲーム、時間制スポーツなどの複合エンタメ施設を展開するラウンドワン(4680)。料金の値上げが収益に貢献していますし、アメリカで高級フードホール1号店の開業も収益に貢献している。クレーンゲームが今大ブームで、アニメやアーティストとのコラボ企画が非常に人気になっています。7月9日に発表した6月の国内既存店売上高は前年同月比14.8%増とかなり大幅な伸びになりました。
さらに株価材料として大きいのが米国子会社のIPOです。SECに登録届出書を提出済みで、年内にも子会社が上場すれば株価の強気材料になる可能性があります。施設は室内型が多く「雨天・猛暑に強い」という構造的な強みもあり、2027年3月期純利益は過去最高更新の会社予想。7月14日には1337円の年初来高値を更新しています。
注目銘柄②:イオンファンタジー(4343)——子どもの遊び場×推し活需要
田嶋:イオングループの大型ショッピングセンター内を中心に国内400強の直営店舗を展開しています。既存店の活性化が功を奏して勢いを取り戻し、国内推し活需要を狙う限定商材の拡充がヒット。既存店が順調な上に新店も積極出店が進んで収益の上乗せ要因になっています。加えて東南アジアは既存店の改装や料金見直しで収益が改善。2027年3月期純利益は過去最高更新を見込んでいます。
夏休みシーズンの「子どもをどこで遊ばせるか」という家庭の課題に、涼しい室内で応える業態。猛暑が長引くほど追い風が強まるポジションです。
注目銘柄③④:鉄人化ホールディングス(2404)とAOKIホールディングス(8214)
カラオケ関連では2銘柄が紹介されました。
鉄人化ホールディングス(2404)は「カラオケの鉄人」を展開。業界首位級の豊富な楽曲数が強みで、「他ではなかなか歌えないものが歌えちゃう」という差別化が効いています。
AOKIホールディングス(8214)は紳士服のイメージが強い企業ですが、現在は複合カフェ「快活CLUB」、カラオケ「コート・ダジュール」、フィットネスジム、インドアゴルフと、すべて室内型のレジャー事業を展開。ファッション以外の売上が全体の5割を占めるまでになっており、エンターテインメント事業が収益の伸びを牽引しています。
注目銘柄⑤:オリエンタルランド——値上げと暑さ対策の両輪
田嶋:オリエンタルランドが先週13日に、10月からチケットの上限価格を引き上げると伝わって、市場では買い人気を集めています。猛暑の中でディズニーランド、ディズニーシーに足を運ぶかという点も、暑さ対策を様々な形で展開して、アプリなどを使って「今こういうところで涼めますよ」という情報提供に力を入れていくと言っていますので、その辺も期待されますね。
| 銘柄 | コード | 注目ポイント |
|---|---|---|
| ラウンドワン | 4680 | 既存店14.8%増・値上げ・米子会社IPO |
| イオンファンタジー | 4343 | 推し活商材・純利益過去最高見込み |
| 鉄人化HD | 2404 | 業界首位級の楽曲数 |
| AOKI HD | 8214 | 非ファッション売上5割・全業態インドア |
| オリエンタルランド | — | 10月チケット値上げ・暑さ対策 |
📌 過去放送との文脈リンク
2026年6月11日放送(田嶋智太郎氏)ではW杯特需としてコナミ・ミズノ・アシックス等の「イベント消費」銘柄が紹介されました。今回の猛暑×サービス業はその続編とも言える「季節消費」テーマです。田嶋氏の銘柄選定は一貫して「生活者の行動変化→恩恵を受ける業態→具体的な銘柄」という流れで組み立てられており、この思考プロセス自体が個人投資家にとって最高の教材になっています。📌 投資視点まとめ
- サービス業指数は2000年2月の史上最高値4197ポイント更新が目前
- 価格転嫁・実質賃金プラス・ボーナス過去最高という消費の三重追い風
- 猛暑は「室内型レジャー」への構造的な需要シフトを生む
- ラウンドワンは月次14.8%増+米国子会社IPOという二段ロケット
- AI・半導体の調整局面では「出遅れ×テーマ性」のある内需サービス株が受け皿になりやすい
まとめ:季節性を「待つ武器」に変える——夏相場の歩き方


前半の笹木氏が示したのは「焦らない根拠」でした。過去30年のデータが示す7・8・9月のワーストスリー、機関投資家の守りへのシフト、そして11月に向けた回復パターン——これらを知っていれば、夏場の調整は恐怖ではなく「準備期間」に変わります。
後半の田嶋氏が示したのは「待つ間の選択肢」でした。AI・半導体が調整する間も、猛暑・ボーナス・値上げの追い風を受けるサービス業には資金が向かっている。相場全体が夏枯れでも、テーマのある場所には夏ならではの妙味があるのです。
「休むも相場」と「テーマで攻める」——この二つは矛盾しません。コア資金は9〜10月の仕込み時期を待ちながら、サテライト資金で季節テーマを追う。そんなメリハリのある夏の過ごし方が、今回の放送から見えてきます。
「投資がわかると意識が変わる。意識が変わると世界が変わる。」
これほどまでに激動し、予測不可能な相場環境において、フィリップ証券の誇る高機能プラットフォーム「MT5」による自動売買(EA)を活用し、システムに冷静な取引を任せるのが、これからの「投資の旅(ジャーニー)」をサバイブする鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「9〜10月に買えば有利」という季節性は毎年当てはまりますか?
A. あくまで過去30年の平均傾向であり、毎年必ず再現されるわけではありません。ただし日米両市場で共通して観測される頑健なパターンであり、今年は11月の米中間選挙という「不透明感→払拭」のイベントもあるため、笹木氏は「今年は過去の平均に近い形になる」と予想しています。統計的傾向として資金配分のタイミング判断に活用するのが正しい使い方です。
Q2. セクターローテーションで日経平均とTOPIXはどう使い分けるべきですか?
A. AI・半導体のウエイトが高い日経平均は高ベータ銘柄の調整の影響を受けやすく、TOPIXは10月からの指数見直しで新規組入れ候補への資金流入が期待されます。指数連動投資をする場合、年後半はTOPIX連動型が相対的に優位になる可能性があるというのが笹木氏の見立てです。
Q3. サービス業銘柄は猛暑が終わったら売られませんか?
A. 猛暑は短期的な追い風ですが、紹介された銘柄の多くは「値上げによる収益力向上」「過去最高益の会社予想」「米国IPO」など、季節要因を超えた中期的な材料を持っています。一時的な天候テーマか構造的な成長かを分けて評価することが重要です。
Q4. ラウンドワンの米国子会社IPOは親会社の株価にどう影響しますか?
A. 一般的に子会社IPOは①子会社価値の顕在化、②調達資金による成長加速、③グローバルな認知度・ブランド価値の向上という好材料になり得ます。一方で親子上場への批判や持分希薄化の論点もあるため、上場条件の詳細が判明した段階で改めて評価する必要があります。
Q5. フィリップ証券で今回紹介された銘柄に投資できますか?
A. できます。ラウンドワン・イオンファンタジー・鉄人化HD・AOKI HD・オリエンタルランドはいずれも東証上場銘柄であり、フィリップ証券の日本株取引で売買可能です。また、MT5口座では日経平均やTOPIXなどの株価指数CFDも取引できるため、指数の使い分け戦略の実践にも対応できます。








