この上昇はどこまで続くのか、そして日本という国そのものはこれから繁栄できるのか——今回の放送は、ミクロの相場観とマクロの文明論が交差する濃密な回となりました。
前半はフィリップ証券代表取締役社長・永堀真氏が、ローマ帝国・スペイン帝国・オランダ・シンガポールの興亡から「国家が繁栄する4つの共通点」を解説。国の栄枯盛衰と企業の成長条件が重なる、経営者ならではの視点が光ります。後半は金融ジャーナリスト・川口一晃氏が、11月の米中間選挙・FRB新体制・イラン情勢という三大ポイントを軸に年後半マーケットを展望。
🎙 番組概要
- 番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
- 放送日:2026年7月16日(木)
- 提供:フィリップ証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
- パーソナリティ:浜田 節子 氏
- コメンテーター:
- 前半:永堀 真 氏(フィリップ証券 代表取締役社長)
- 後半:川口 一晃 氏(金融ジャーナリスト・経済評論家)
前半テーマ:歴史から学ぶ国家の繁栄と衰退——4つの共通点
ローマ帝国は「外敵」ではなく「内部」から滅びた
今回の永堀社長のテーマは、いつもの株式・IPO解説とは趣向を変えた「国家の繁栄と衰退の歴史」。しかしその内容は、投資判断・企業分析にそのまま応用できる本質論でした。
まず取り上げられたのが、究極の覇権国家・ローマ帝国です。
永堀:ローマ帝国の繁栄は、当時誰もが永遠に続くと考えていたと思います。
彼らは国土を拡大しながら、道路、水道、そして法律を作って多くの民族を受け入れてきました。強かったのは彼らの軍隊というよりも、むしろ社会の仕組みそのものだったと思います。でも、帝国が大きくなるにつれて政治が不安定になって、財政も悪化して、異民族との争いや国内の反乱、実は人口減少も重なって、結果として消滅をしてしまった。ここから学べることは、国は外敵だけで滅びるのではないということなんですよね。内部の仕組みが機能しなくなった時に、国は弱くなっていく。
スペイン帝国の教訓——「豊かさ」が衰退の種になる
次の事例は「太陽の沈まぬ国」スペイン帝国。16世紀、新大陸から莫大な銀が流れ込み、世界で最も豊かな国となりました。
永堀:ところが、その豊かさが永遠には続かなかった。豊富な富があることで、国内産業を育てようという努力が弱まってしまって、多くの商品を海外から輸入するようになってしまいます。さらに戦争をたくさんして出費が増えて、財政が悪化して、国家が弱体化していく。豊富なお金があったのに、それを未来への投資に使わなかったことが問題だったのかなと思っています。
「資源の呪い」とも呼ばれるこの現象は、現代の資源国や、過去の成功に安住する企業にもそのまま当てはまる普遍的な教訓です。
小国オランダとシンガポール——「開かれた国」だけが繁栄する
では逆に、小さな国が繁栄した事例には何があるのか。永堀社長は17世紀のオランダと現代のシンガポールを挙げました。
永堀:オランダは国土が小さくて天然資源もありません。それでも世界中から商人や技術者を受け入れて、貿易や金融の中心地になりました。自分たちだけで発展しようとしたのではなくて、世界中の知恵を集めたことが成功につながった。実はオランダは世界で初めて株式市場を作った場所でもありました。
📌 用語解説:アムステルダム証券取引所とは
1602年、世界初の株式会社とされるオランダ東インド会社の株式を取引するために設立された、世界最古の証券取引所。「不特定多数から資金を集めて大事業を行い、利益を分配する」という現代の株式市場の原型がここで生まれた。小国オランダが世界の金融センターになれた背景には、この金融イノベーションがあった。
永堀:シンガポールには資源が全くありません。
しかし、教育、法制度、空港といったインフラを徹底的に整備して、外国から人・物・お金が集まる国を作った。彼らは本気で世界で最も利便性が高い国を目指しているんですよね。私たちもよく現地に行くんですが、彼らは常に外国人からものを学び、受け入れようとするだけでなく、外国人が心地よく仕事できる環境を整えようとするんです。
幕末日本の成功体験と「繁栄の4条件」
日本の歴史にも成功事例があります。幕末、鎖国を解かれた日本は西洋の制度・技術を驚くほどの速さで学び、日本に合った形で取り入れました。「世界から学び、受け入れ、自ら変わる」姿勢が近代化を支えたのです。
これらの歴史を踏まえ、永堀社長は繁栄する国の4つの共通点を提示しました。
| 条件 | 内容 | 反面教師 |
|---|---|---|
| ① 変化を恐れない | 過去の成功体験にこだわる国は取り残される | ローマ帝国・スペイン帝国 |
| ② 人材・知識を世界から受け入れる | 繁栄した国ほど外に開かれている | オランダ・シンガポール |
| ③ 教育・技術に投資する | 未来への投資を続けた国だけが競争力を持つ | スペインの銀の浪費 |
| ④ 公正で信頼される制度を持つ | 安心して挑戦できる社会に新産業が生まれる | ローマの制度疲労 |
そしてこの4条件は、そのまま企業にも当てはまると永堀社長は言います。
永堀:ミクロな視点で見ると企業も全く一緒で、変化に挑戦して、貪欲に外の情報を吸収して、人材やITに投資をして、最後に公正公平な人事評価制度を作った会社、これが長期的に成長していくということなんですよね。
今の日本は繁栄できるのか——「問題を知りながら変わらないこと」が最大のリスク
浜田:今の日本はどうでしょうか。
永堀:今の日本は人口減少、少子高齢化、財政問題、多くの課題を抱えています。
でも、歴史を見ると、どの時代もどの国家でも課題はあるんですよね。本当に危険だと思うのは、問題がわかっているのに変わろうと挑戦しないこと。ここが一番の問題点になりうるのかなと思っています。でも、私は日本にはまだまだ大きな可能性があると思っています。高い技術力、豊かな文化、安全な社会、真面目で誠実な人材と、海外から見れば日本には今でも多くの魅力がある。
永堀:国が繁栄するために最も大切なのは、領土の広さとか人口の多さとか資源の豊富さではない。
学び続ける力、異なる人々を受け入れる力、問題を修正する力、そして次世代のために投資する力。日本がこれから繁栄する国になるのか、それとも過去の成功を懐かしむだけの国になるのか。これは誰かが突然決めるのではなくて、今を生きる私たちの選択の中にあるのかなと思っています。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年6月18日放送(永堀真氏)では「SpaceXとイーロン・マスクの第1原理思考——常識を前提にせずゼロから考える」という視点が語られました。今回の「変化を恐れない国だけが繁栄する」という歴史観は、まさにその国家版です。個人・企業・国家というスケールの違いはあれど、「過去の成功体験を疑い、学び続け、未来に投資する」という成功原理が一貫していることがわかります。📌 投資視点まとめ
- 国家も企業も「外敵」ではなく「内部の制度疲労」から衰退する——企業分析ではガバナンスと組織文化を見る
- 豊かさは油断の種——好業績企業ほど「未来への投資(研究開発・人材)」を続けているかチェック
- 「開かれているか」は国・企業共通の繁栄条件——海外人材登用・外部連携に積極的な企業は長期成長しやすい
- 永堀社長の4条件は銘柄選定のチェックリストとしてそのまま使える
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後半テーマ:年後半マーケットを考える——日経平均8万円説とポンド円250円シナリオ

年後半の三大ポイント:米中間選挙・FRB新体制・イラン情勢
後半は金融ジャーナリスト・川口一晃氏が、7月に入った今、年後半のマーケットで押さえるべきポイントを整理しました。
川口:一つはやはり11月、アメリカの中間選挙です。トランプさんが世界で大暴れしていますので、政権運営を考えるとこれが一番の大きなポイントになるのかなと思います。そして、先日新しくなったFRB議長。どういうかじ取りがなされるのか、今月末にFOMCがありますが、アメリカの金融政策の行方。それから、せっかく停戦合意したのにまたドンパチ始まりましたイラン問題。泥沼化していくのか、それとも拡大せずに終焉を迎えることができるのか。
中間選挙については、川口氏は「個人的には共和党が非常に苦戦するのではないか」と予想。その場合、ここまで順調に推移してきた株式市場への影響が懸念材料になるとしました。
📌 用語解説:中間選挙とは
米国で大統領選挙の中間年(大統領任期4年の2年目)に行われる連邦議会選挙。下院の全議席と上院の約3分の1が改選される。歴史的に政権与党が苦戦する傾向があり、選挙結果次第で「ねじれ議会」となって政策遂行が停滞するため、株式市場にとって重要なイベントとされる。
日経平均は年初予想を1割超上回る展開——次の目標は「8万円弱」
年初の想定を大きく上回る日本株の上昇について、川口氏は率直に語りました。
川口:私も年初の1月、2月あたりのセミナーでは、今年うまく上昇すれば6万5000円が夏にやってくるという話をさせていただいていたんですが、これがもう予想を1割以上も上回って7万円台ということで。今改めて一目均衡表を使って、今年この後どれぐらいの値段の可能性があるかといいますと、私は8万円弱の可能性はあると考えています。
川口:2025年4月の3万400円から今年3月までの5万8800円ぐらいまで、約2万8500円上がっています。それを2026年4月の安値5万700円に足しますと、7万9000円台という数字が出てきますので、この可能性は否定できないなと思っています。
📌 用語解説:一目均衡表の値幅計算(N計算値)とは
一目均衡表における目標株価の算出方法の一つ。「A点からB点への上昇幅を、押し目のC点に加算する」ことで次の上昇目標を導く(N計算値=C+(B−A))。過去の値動きのリズムが将来も繰り返されるという考え方に基づく。川口氏の「7万9000円台」はこの計算に基づいた理論値。
為替介入の「絶対防衛ライン」は163円前後——しかし気になるポンド円
ドル円については、市場で待たれ続けている為替介入の水準感が語られました。
浜田:為替介入の絶対防衛ラインとして意識されている水準は今どのくらいなんでしょうか。
川口:僕は163円前後、そこから2円、3円、この辺から上に上がるとさすがに、というふうには思っているんですけどね。でもなかなかやってこないのに、ちょっと僕もイライラしているというところではございます。
そして川口氏が「頭の片隅に入れておいてほしい」と語ったのが、ポンド円の異変です。
川口:実はポンド円をよく見ておりまして、この動きを見ていますと、ポンド円が250円ぐらいになる可能性があるなと思っているんですね。
昨日219円60銭までありました。もうじき220円なんですが、これがもし250円にいくとなると、ドル円が160円でとどまっているわけないなというのが——こんなことあるのかなと自分でもちょっと信じられないんですが、気になっているところではあります。
ポンド円250円が実現するなら、クロス円全体の円安が大幅に進むことを意味し、ドル円も現行水準では収まらない——という連想です。時期は「1年、2年先かもしれない」としつつも、プロが「自分でも信じられない」と言いながら口にする数字には重みがあります。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年7月2日放送(山中康司氏)では「介入の判断基準は水準ではなく過度な変動」「テクニカルの節目は169〜170円、次は184円」という分析が示されました。今回の川口氏の「防衛ライン163円前後」という見方と合わせると、①163〜165円ゾーンで当局の警戒が最高潮に達し、②それでも止まらなければ169〜170円がテクニカルの主戦場になる、という二段構えの見取り図が描けます。複数のプロの水準観を重ねて自分のマップを作る——これがラジオ活用の醍醐味です。
1980年代バブルとの「類似点」と「相違点」
バブル期を実際に経験している川口氏ならではの、歴史比較の視点も披露されました。
川口:似ている状況としては、日経平均などが特定の銘柄だけでグイグイ押し上げられて、自分たちの持っている銘柄はちっとも上がらないなという現象。まさにAI、半導体関連ですね。実は80年代後半、日経平均が3万8915円という当時の最高値をつけに行く時に全く同じ現象が起きたわけです。外国人投資家による裁定取引などが行われて、品薄の225採用銘柄がどんどん買われて、他の銘柄が買われなかった。
一方、決定的に異なる点は「社会の空気」だと言います。
川口:当時は新聞記事を読むと、日本の未来に対して明るい記事が多かった。今、新聞記事を見ると暗いニュースばかり。これが今の社会を表しているなと思って、そこがちょっと僕はマイナスのイメージで、そういったことが株式市場に今後影響してこないかなと思っています。
指数は最高値圏でも、社会の熱気はバブル期と正反対——この「静かな株高」がどこまで続くのか。前半の永堀社長が語った「問題がわかっているのに変わろうとしないことが最大のリスク」という言葉とも響き合う、考えさせられる指摘です。
📌 投資視点まとめ
- 年後半の三大注目:11月米中間選挙(共和党苦戦シナリオ)・FRB新議長の政策運営・イラン情勢の行方
- 一目均衡表の値幅計算では日経平均「7万9000円台」が視野——ただし中間選挙リスクに注意
- ドル円の介入警戒ラインは163円前後、ポンド円250円シナリオが実現するならドル円はさらに上へ
- 指数上昇が特定銘柄(AI・半導体)に偏る構図は80年代バブルと類似——持たざるリスクと集中リスクの両面を意識
- バブル期と違い社会の空気は「暗い」——センチメントの急変が調整の引き金になる可能性も
まとめ:国家の栄枯盛衰と相場の行方——「変わり続ける力」がすべてを決める

前半の歴史講義と後半の相場展望。今回の二つのテーマをつなぐキーワードは「変化」です。
ローマもスペインも、変化への対応力を失ったときに衰退が始まりました。
オランダとシンガポールは、外に開かれ変わり続けることで小国ながら繁栄を勝ち取りました。そして今の日本株は7万円台という歴史的水準にありながら、社会の空気は80年代バブルとは対照的に冷めている——この「静かな株高」が本物の繁栄につながるかどうかは、永堀社長の言葉を借りれば「今を生きる私たちの選択」にかかっています。
投資家にできる選択は明確です。学び続けること、変化を恐れないこと、そして感情ではなく仕組みで相場と向き合うことです。
これほどまでに激動し、予測不可能な相場環境において、フィリップ証券の誇る高機能プラットフォーム「MT5」による自動売買(EA)を活用し、システムに冷静な取引を任せるのが、これからの「投資の旅(ジャーニー)」をサバイブする鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日経平均8万円説の根拠は何ですか?
A. 川口氏が示したのは一目均衡表の値幅計算(N計算値)です。2025年4月安値3万400円から2026年3月高値5万8800円までの上昇幅約2万8500円を、2026年4月の押し目安値5万700円に加算すると7万9000円台という理論値が導かれます。あくまでテクニカル上の目標値であり、中間選挙・金融政策・地政学リスク次第で変わり得る点に注意が必要です。
Q2. 米中間選挙は株式市場にどう影響しますか?
A. 川口氏は「共和党苦戦」を予想しており、その場合は政権の政策遂行力低下への懸念から株式市場の調整要因になり得ます。一方、歴史的には「中間選挙後の1年間は米国株が上昇しやすい」というアノマリーも知られており、選挙前の不透明感と選挙後の織り込み済み反発の両面を意識する必要があります。
Q3. ポンド円250円は現実的なシナリオですか?
A. 川口氏自身「自分でも信じられない」と留保をつけた上での、チャート観察に基づく可能性の提示です。時期も「1年、2年先かもしれない」とされています。重要なのは的中するかどうかよりも、「クロス円全体が大幅な円安に向かうならドル円も現行水準では収まらない」という連関の視点を持っておくことです。
Q4. 国家の繁栄条件は個別銘柄の分析にどう活かせますか?
A. 永堀社長の4条件(変化を恐れない・外部から学ぶ・未来へ投資する・公正な制度を持つ)は企業にもそのまま当てはまります。具体的には、①事業転換への挑戦姿勢、②海外人材・外部連携への開放性、③研究開発費・人材投資の水準、④ガバナンス体制の透明性——を有価証券報告書や統合報告書で確認することで、長期成長企業を見極める視点として活用できます。
Q5. フィリップ証券でシンガポール株に投資できますか?
A. できます。フィリップ証券はシンガポールに本社を置くフィリップキャピタルグループの日本法人であり、シンガポール株をはじめとするアジア株式の取扱いは国内証券会社の中でも充実しています。永堀社長が語った「繁栄する国」への投資を実践する選択肢として、詳細は公式サイトまたは営業スタッフへお問い合わせください。
