長期金利は0.7%から2.7%へ、日経平均は4万円から7万円台へ、ドル円は151円から163円へ——この約3年間、日本のマーケットは文字通り「劇的」に変化しました。
前半はフィリップ証券オンライン事業本部マルチプロダクツ部長・工藤正武氏が、番組出演3年の節目に合わせてこの激動の変化を数字で総復習。日銀金融政策決定会合を目前に控えたタイミングで、金利・株式・為替の現在地と展望を整理します。
後半はエコノミスト・門倉貴史氏が、世界的な記録的猛暑を切り口に、インドの熱波対策「ヒートアクションプラン」を解説。クールルーフ政策の拡大が日本の塗料メーカーにもたらすビジネスチャンスまで、猛暑を投資テーマとして読み解く視点が満載です。
🎙 番組概要
- 番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
- 放送日:2026年7月30日(木)
- 提供:フィリップ証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
- パーソナリティ:浜田 節子 氏
- コメンテーター:
- 前半:工藤 正武 氏(フィリップ証券 オンライン事業本部 マルチプロダクツ部長)
- 後半:門倉 貴史 氏(エコノミスト/BRICs経済研究所 代表)
前半テーマ:この3年でマーケットはどう変わったか——数字で振り返る激動の変化
金利:異次元緩和から「普通の状態」へ
番組出演約3年の節目を迎えた工藤氏。まず取り上げたのが国内金融政策の大転換です。
工藤:日本銀行は2024年3月の金融政策決定会合でゼロ金利の解除を決定しました。
現在の政策金利は1%となっております。政策金利の影響を最も受けると言われている2年物国債の利回りは、0.2%から現在約1.4%まで上がっております。長期金利、いわゆる10年物国債の利回りは0.7%から現在約2.7%となっております。
| 指標 | 2024年3月頃 | 現在(2026年7月) |
|---|---|---|
| 政策金利 | ゼロ金利解除 | 1% |
| 2年物国債利回り | 0.2% | 約1.4% |
| 10年物国債利回り | 0.7% | 約2.7%(一時2.9%) |
| 長期国債先物(JGB先物) | 147円前後 | 127円前後 |
7月には長期金利が一時30年ぶりの2.9%をつける場面もありました。その際は片山財務大臣によるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内投資推進発言があり、金利は2.7%まで急落するという政策発言主導の動きも見られました。
工藤:長期金利がほぼ2%上がったため、長期国債先物は20円も下がっております。異次元の金融緩和から正常になってきていることが確認できると思います。
📌 用語解説:金利と債券価格の関係
債券は「金利が上がると価格が下がる」という逆相関の関係にある。すでに発行された低金利の債券は、新しく発行される高金利の債券と比べて魅力が落ちるため、市場価格が下落する仕組み。長期国債先物が147円→127円へ20円下落したのは、長期金利が0.7%→2.7%へ2%上昇したことの裏返しである。
放送日は日銀金融政策決定会合の初日。工藤氏は個人的見解として、今後の金利水準をこう予想しました。
工藤:為替レートがこれ以上の大幅な円安がないということを前提として、現在年率1.6%のコアCPIが、イラン情勢や国内の人手不足の進行による物価上昇があったとしても、日銀が2%を目標としているため、こちらが上限ではないかと予想しております。従って、金利に関しては2年物国債で上がったとしても2.5%ぐらいまでではないかと考えております。
株式:日経平均1.5倍、そして「経験したことがない相場」
株式市場の3年間はさらに劇的でした。
工藤:2024年3月の日経平均は、バブル期の高値を初めて抜いて4万円をつけました。現在は7万円台の高値から下がったとはいえ約6万円ぐらいと1.5倍以上となっております。TOPIXに関しては2750ポイントぐらいでしたが、現在は約4000ポイントと1.4倍ぐらいです。
そして工藤氏が「私も経験したことがない」と語ったのが、足元の相場の特異な状況です。
工藤:今年に入ってからは、キオクシアホールディングス1銘柄だけで、1日のプライム市場の売買代金の20%を占めるようになりました。この銘柄は1日の変動率も10%を超える日も多く、日経平均への寄与度も高いため、指数自体も荒い動きになっております。また、日本の時価総額1位の会社がキオクシアホールディングスからトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャルグループと目まぐるしく7月は変わっているという、私も経験したことがない相場が続いております。
時価総額日本一が週替わりで入れ替わる——この異例の事態は、AI・半導体相場の過熱と変動性を象徴しています。ただし工藤氏は上昇相場の終焉とは見ていません。
工藤:2年前よりも日経平均採用銘柄では業績を伴っている銘柄も多いため、上昇相場が終わったとは思いませんが、半導体関係は荒っぽい動きですので、株価を四六時中見ていると必要のない売買をして振り回されそうな印象です。どうしても短期的なことを見ている投資家が多いようで、太く短く生きようとしているような感じがしますね。
「太く短く生きようとしている」——短期売買に振り回される投資家への、ユーモアを交えた本質的な警鐘です。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年7月23日放送(笹木和弘氏)では「株価を凝視せず、季節性を踏まえて9〜10月の仕込み時期を待つ」という戦略が示されました。今回の工藤氏の「四六時中見ていると必要のない売買をして振り回される」という指摘は、これと完全に呼応しています。二人のプロが期せずして同じ警告を発している——ボラティリティの高い相場でこそ「見ない技術」「待つ技術」が重要ということです。
為替:ドル円より深刻な「クロス円の円安」
ドル円は3年前の151円から現在163円30銭台後半へ。40年ぶりの歴史的水準ですが、工藤氏が「より強く感じる」と語ったのは、ドル以外の通貨に対する円安です。
| 通貨ペア | 2024年3月頃 | 現在 |
|---|---|---|
| ドル円 | 151円前後 | 163円台後半 |
| ユーロ円 | 160円台前半 | 185円前後 |
| ポンド円 | 190円台前半 | 220円前後 |
工藤:ヨーロッパに旅行に行くことを躊躇するレベルです。当社はシンガポールが拠点となっているんですけれども、シンガポールも物価が上昇しているため、コロナ前に私が泊まっていたホテルは現在2倍以上の料金になっております。円換算すると一泊1万1000円が3万8000円と3倍以上の値段になってます。
工藤:海外から見た場合にはいかに日本の物価が安いか、視点を変えて日本から海外を見ると日本が貧しくなっているかがわかると思います。物価高を含め、円安の負の側面を肌感覚で感じるようになっております。
一方、ドル円自体は介入警戒から1日の値動きが30銭もない日もあり、「株式とは打って変わってボラティリティのない状態」という対照的な状況も指摘されました。
工藤氏の展望——フィジカルAIへの期待と「普通の状態」への回帰
工藤:為替に関してはこれ以上円安が進行することは価格転嫁に加速がかかり、生活に悪影響を及ぼすため困るなとは思っております。
株に関しては荒っぽい動きではありますが、今後フィジカルAIが人々の生活を快適に豊かにすることにより、新しい企業価値が創出されて、長期的に株高になることを期待しております。金利に関しては、企業業績が良い時は金利が高いことが普通ですので、今までの長い特殊な状態から単に普通の状態に戻っただけだろうと考えております。
📌 用語解説:フィジカルAIとは
チャットや画像生成などデジタル空間で完結するAIに対し、ロボット・自動運転・産業機械など物理世界で動作するAIの総称。生成AI→エージェントAIに続く次の進化段階として注目されており、NVIDIAをはじめ各社が開発を加速している。実現すれば製造・物流・建設・介護など労働集約型産業の生産性が劇的に変わるとされ、人手不足の日本にとって特に恩恵が大きいと期待される分野。📌 投資視点まとめ
- 金利上昇は「異常の終わり」であり「普通への回帰」——恐れるべき変化ではない
- 2年物国債の上限目安は2.5%程度(工藤氏の個人的見解)
- キオクシア1銘柄が売買代金の20%を占める偏った相場——指数の荒い動きに振り回されない
- クロス円(ユーロ円185円・ポンド円220円)の円安はドル円以上に進行中
- 長期テーマは「フィジカルAI」による新しい企業価値の創出
フィリップ証券からのお知らせ

ファイナンシャルジャーニーでは現在リスナーアンケートを実施中です。番組の感想・ご要望をお送りいただいた方の中から抽選で30名様に、フィリップ証券ロゴ入りモレスキン特製ノートをプレゼント。締め切りは明日7月31日(金)です。詳しくはラジオNIKKEI「ファイナンシャル・ジャーニー」番組サイトをご覧ください。番組開始4年目に突入したファイナンシャル・ジャーニーを今後ともよろしくお願いいたします。
当社が取り扱う商品等には、価格変動等により元本損失・元本超過損が生じるおそれがあります。投資にあたっては、契約締結前交付書面等を必ずお読みください。フィリップ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第127号
後半テーマ:世界的猛暑とインドの熱波対策——「クールルーフ」に眠る日本企業の商機

45度超の熱波——南アジアで何が起きているのか
日本各地で40度以上の酷暑日が相次ぐ今夏。しかし世界に目を向けると、事態はさらに深刻です。
門倉:インド、パキスタン、アフガニスタンといった南アジアの地域では、近年5月から6月頃に猛暑と熱波が頻発するようになっています。今年も南アジアでは気温が平年を大幅に上回って急上昇しておりまして、一部の地域では45度から50度という非常に高温になっています。
体温を大きく超える熱波は、まず人命に直結します。インドでは熱波にさらされたことが原因で約1万人が死亡したという報告があるほどです。
熱波の経済損失——農業・労働・教育・家庭への連鎖
門倉氏は熱波の影響が人的被害にとどまらず、経済社会全体に連鎖することをデータで示しました。
門倉:インドは広大な農地と多くの農業従事者を抱える世界有数の農業国ですが、熱波に見舞われますと灌漑用水の需要が増えて、もともと不足している水資源にさらに負荷がかかります。農作物の収穫量が減少して、病害虫の発生率が高まって、土壌の劣化が起こることも知られています。
労働への影響は衝撃的な数字で示されました。
門倉:1日単位で雇用されている労働者や農業従事者は、どのような環境にあっても働かないと収入が得られない状況ですので、熱波の下で労働するという非常に大きなリスクに直面します。ある調査によりますと、2021年に発生した熱波の影響によって失われたインド人の労働時間は1672億時間にも及ぶということが明らかになっています。
さらに教育面では、トタン屋根の農村学校で授業がほとんど行えなくなる問題、そして家庭内では「平均気温が1度上昇するごとに親密なパートナーによる暴力が4.5%増加する」という調査結果まで——熱波は社会のあらゆる層を蝕む複合的な災害であることがわかります。
アメダバードの教訓から生まれた「ヒートアクションプラン」
こうした被害への対策として注目されるのが、インドの「ヒートアクションプラン」です。
門倉:2010年にアメダバードで熱波が発生した時には、気温が46.8度まで上昇しまして、1000人以上の方が亡くなっています。アメダバード市はこの経験を教訓として、特別な暑熱予報、早期警報、熱中症とその治療法に関する医療従事者への教育などを盛り込んだ、南アジアで初の熱波健康対策行動計画を策定しました。2013年にヒートアクションプランとして始動しておりまして、現在では全国規模で展開されるようになっています。
具体的な施策は4本柱です。
| 施策 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 日よけシェード | 公園・学校等に鉄鋼支柱+メッシュ幕材のテンション構造 | 強風に強く自由設計可能 |
| ミストステーション | 駅前・バス停・広場に気化熱冷却設備 | 周辺気温1〜3度低下、体感4度前後低下 |
| クールルーフ | トタン屋根・外壁に反射塗料・白漆喰塗装 | 室内温度5度低下の報告も |
| 都市緑化 | 樹木の植栽推進 | 樹木の下は平均10度、最大20度涼しい |
費用対効果ナンバーワンは「クールルーフ」——日本の塗料メーカーに商機
門倉:一般塗料の場合には屋上・屋根に熱となる赤外線が吸収されて室内温度が大きく上昇しますが、クールルーフは赤外線を反射することで、屋根や屋上の表面温度を最大で10度から15度も抑制することができます。冷房負荷が軽減されるので省エネが実現しますし、温度上昇が抑制されることで屋根の素材の耐久性が向上して長持ちするようにもなります。メンテナンスも遮熱塗料の塗り替えだけで済むのでコストも安上がりです。
そしてここに、日本企業の大きなビジネスチャンスがあります。
門倉:インドでクールルーフ政策が進んでいきますと、遮熱塗料に対して需要が大きく拡大することになりますので、遮熱塗料に関して高い技術を持っております日本の塗料メーカーにとってはビジネスチャンスが大きく広がっていくということになるのかなと思います。
浜田:確かに日本企業はインドの塗料市場で圧倒的なシェアを持っていると聞きますね。
📌 用語解説:遮熱塗料と日本の塗料メーカー
遮熱塗料は太陽光の赤外線を反射して建物の温度上昇を抑える機能性塗料。日本ペイントホールディングス(4612)はインド塗料市場に早くから参入しており、現地企業の買収を通じてインド事業を主要な成長ドライバーに位置付けている。関西ペイント(4613)もインド・アジアに広く展開。地球温暖化・熱波の頻発は、皮肉にもこうした機能性塗料の構造的な需要拡大要因となっている。📌 過去放送との文脈リンク
2026年6月25日放送(門倉貴史氏)では「インドで日本アニメが大ブーム——1.2億人のファンとローカライズ戦略」が解説されました。今回の遮熱塗料の話と合わせると、門倉氏が一貫して「インド14億人市場×日本企業の強み」という交差点を追っていることがわかります。アニメ(コンテンツ)と塗料(素材技術)——分野は違えど、「日本が持つ強みがインドの構造的ニーズと噛み合う場所」を探すという銘柄発掘の型は共通です。また7月23日放送(田嶋智太郎氏)の「猛暑×国内サービス業」と今回の「猛暑×インド対策需要」を並べると、同じ猛暑テーマでも内需・外需の両面から投資機会を探せることがわかります。📌 投資視点まとめ
- 熱波は人命・農業・労働・教育・家庭に連鎖する複合災害——対策需要は構造的に拡大
- インドのヒートアクションプランは全国展開フェーズへ——関連需要は長期テーマ
- 費用対効果最強の「クールルーフ」拡大は遮熱塗料需要に直結
- 日本の塗料メーカーはインド市場で高シェア——温暖化がもたらす皮肉な追い風
- 「気候変動対策×日本の技術力」は今後も繰り返し浮上する投資テーマ
まとめ:3年の変化を知る者だけが、次の3年を描ける

前半の工藤氏の総復習は、「いま自分がどこにいるのか」を確認する作業でした。金利は異常から普通へ、株は4万円から7万円台へ、円はドルだけでなく全通貨に対して安く——この3年の変化を数字で押さえておくことは、次の変化に気づくための座標軸になります。
後半の門倉氏の解説は、「気候変動という不可逆な変化」が生む投資機会の話でした。熱波は悲劇ですが、その対策——クールルーフ・遮熱塗料・都市緑化——には日本企業の技術が活きる場所が確かにあります。
マクロの座標軸を持ち、構造変化の中に機会を見つける。そして短期の荒い値動きには「太く短く」ではなく、どっしりと構えて向き合う——番組4年目に突入した今回の放送は、投資の基本姿勢を再確認させてくれる回でした。
「投資がわかると意識が変わる。意識が変わると世界が変わる。」
これほどまでに激動し、予測不可能な相場環境において、フィリップ証券の誇る高機能プラットフォーム「MT5」による自動売買(EA)を活用し、システムに冷静な取引を任せるのが、これからの「投資の旅(ジャーニー)」をサバイブする鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 長期金利2.7%は歴史的に見て高い水準ですか?
A. 直近30年の日本では突出して高い水準ですが、工藤氏の指摘の通り「企業業績が良い時は金利が高いのが普通」であり、歴史的に見ればゼロ金利・マイナス金利の時代が特殊でした。バブル期以前の日本では長期金利5%超も珍しくなく、「普通の状態への回帰」という捉え方が適切です。
Q2. キオクシア1銘柄が売買代金の20%を占める状況は危険信号ですか?
A. 特定銘柄への極端な集中は、指数のボラティリティを高め、需給主導の乱高下を生みやすくします。1980年代バブル期にも品薄の225採用銘柄への集中が起きており(7月16日放送の川口氏の指摘)、類似性には注意が必要です。ただし工藤氏は「業績を伴っている銘柄も多いため上昇相場が終わったとは思わない」との見方です。
Q3. クロス円の円安は今後も続きますか?
A. ユーロ円185円・ポンド円220円という水準は、ドル円以上に大幅な円安が進んだ結果です。7月16日放送では川口氏が「ポンド円250円の可能性」にも言及しており、円全体の弱さが継続するリスクシナリオは複数のプロが意識しています。海外旅行・輸入品価格を通じて生活への影響も大きいため、外貨建て資産の保有によるヘッジも選択肢になります。
Q4. 遮熱塗料関連で注目すべき日本企業はどこですか?
A. インド塗料市場で高シェアを持つ日本ペイントホールディングス(4612)、アジアに広く展開する関西ペイント(4613)が代表格です。インドのクールルーフ政策の全国展開が進むほど、構造的な需要拡大の恩恵を受けやすいポジションにあります。投資判断の際は各社のインド事業比率や現地での競争環境を確認することをおすすめします。
Q5. フィリップ証券で国債や金利関連の取引はできますか?
A. フィリップ証券では外債をはじめとする債券の取り扱いがあります。また、MT5口座では為替(ドル円・ユーロ円・ポンド円等のクロス円を含む)のFX取引が可能で、工藤氏が解説したような為替の大きな流れを実践に活かすことができます。詳細は公式サイトまたは営業スタッフへお問い合わせください。
