「いつの間にか富裕層」とは?新富裕層の時代とアジア大会3.6兆円の経済効果【2026年9月24日放送】

富裕層と聞いて思い浮かぶのは、企業オーナーや地主、あるいは莫大な遺産を相続した人――そんなイメージではないでしょうか。

ところが今、まったく違うルートで資産1億円を超える人たちが静かに増えています。

普通の会社員として働きながら、持株会やNISAでコツコツ株を積み立てていたら、気づけば純金融資産が1億円を超えていた。番組ではこれを「いつの間にか富裕層」と呼んでいました。今回の「ファイナンシャル・ジャーニー」前半は、フィリップ・キャピタル証券ウェルスマネジメント事業部長の渡辺礼子氏が、世界2,530万人・98.3兆ドルという富裕層マーケットの最前線を解説。キオクシアの「10億り人」600人という生々しい数字も飛び出します。後半はエコノミストの門倉貴史氏が、いま開催中の愛知・名古屋アジア大会を経済で読み解きます。経費は当初見積もりの3.5倍、しかし経済効果は3兆6,000億円。この差額をどう考えるか、じっくり追いかけていきましょう。

🎙 番組概要

  • 番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
  • 放送日:2026年9月24日(木)
  • 提供:フィリップ・キャピタル証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
  • パーソナリティ:浜田 節子 氏
  • コメンテーター:
    • 前半:渡辺 礼子 氏(フィリップ・キャピタル証券 ウェルスマネジメント事業部長)
    • 後半:門倉 貴史 氏(エコノミスト/BRICs経済研究所代表)

—

ヴェストラ

ヴェストラ

投資家歴5年/MT5ユーザー(FXメイン)
ラジオNIKKEIリスナー・番組ファン

よくわからないままFXを続け、コロナ禍にドル円で退場寸前まで追い込まれました。そこから一念発起してラジオで一から投資を学び直したところ、ようやく運用が安定。今では毎週の「ファイナンシャル・ジャーニー」が趣味であり、最大の学びの場です。同じように"耳で学ぶ投資"の良さを届けたくて、このブログで番組の内容をまとめています。

投資家歴5年 MT5・FXメイン ラジオ日経が趣味 番組のファン

X(旧Twitter):@vest_ride

目次

前半テーマ:ウェルスマネジメントの最前線「新富裕層の時代」

浜田:今回はどのようなお話を伺えますでしょうか?

渡辺:今回はウェルスマネジメントの最前線、「新富裕層の時代」というテーマでお話しいたします。

世界の富裕層は2,530万人、資産98.3兆ドル

渡辺:2025年末時点で世界の富裕層は2,530万人に達しました。その資産総額は98.3兆ドル、日本円にするとおよそ1京5,000兆円に上ります。

浜田:1京ですか。

渡辺:世界のGDPが今117兆ドル前後なので、世界のGDPの8割以上に相当する規模になります。しかも富裕層の資産は前年から8.7%増加、人口も7.9%増えています。つまり、数でも資産でも大きく増えた1年だったと言えます。

そして日本の伸びは、世界平均をさらに上回っていました。

渡辺:2025年の日本の富裕層資産は前年比12.3%増、人口も10.9%増と、世界全体を大きく上回る伸びとなりました。その背景にあるのが株式市場の上昇です。

指標 世界 日本
富裕層の人口増加率 +7.9% +10.9%
富裕層の資産増加率 +8.7% +12.3%
人数 2,530万人 —
資産総額 98.3兆ドル(約1京5,000兆円) —

日本の伸びが世界を上回った要因が株高だという点は、押さえておきたいところです。つまり「稼いで貯めた」のではなく「持っていた資産が値上がりした」という構図なんですね。

📌 用語解説:富裕層と純金融資産

  • 一般に純金融資産1億円以上(保有資産から負債を差し引いた額)の世帯を富裕層と呼びます。不動産の居住用部分は含めないのが通例です。
  • さらに5億円以上を「超富裕層」と区分する調査が多く、番組で触れられた「10億ドル以上」はその最上位層にあたります。

📌 過去放送との文脈リンク

日本の富裕層資産が前年比12.3%も伸びた背景には、株式市場の上昇があります。この株高をどう見るかは、7月16日放送で川口一晃氏が「日経平均8万円説」として語っていました。あの回の強気シナリオが、実際に富裕層統計という形で数字になって現れている――そう読むと、今回の話は一段と生々しく感じられます。

「いつの間にか富裕層」という新しい層

浜田:この富裕層とは、そもそもどのような方たちなんでしょうか?

渡辺:これまで富裕層といえば企業オーナーや地主、あるいは相続によって資産を築いた人たちが中心でした。ところが最近、少し違ったタイプの富裕層が増えています。

浜田:どういうことでしょうか?

渡辺:例えば会社員として普通に働きながら、持株会やNISAで株式を積み立てる。そこに株式市場の上昇が重なって、気がつけば純金融資産が1億円を超えていた。こうした「いつの間にか富裕層」と呼ばれる人たちが今、富裕層世帯の1割から2割程度を占めると推定されています。

富裕層の5世帯に1世帯までが、特別な事業をしたわけでも相続を受けたわけでもない――これは結構な衝撃ではないでしょうか。入口が「誰にでも開かれている」タイプの富裕層が、統計に乗るほどの塊になったということです。

📌 用語解説:持株会とNISA

  • 従業員持株会:勤務先の株式を給与天引きで毎月買い付ける制度。会社が購入額に奨励金を上乗せするケースが多く、自社の成長がそのまま資産に反映されます。半面、勤務先と資産の両方を同じ会社に賭けることになる点は意識しておきたいところです。
  • NISA:一定額までの投資で得た利益が非課税になる制度。長期の積立と相性がよいとされます。制度内容は変更される場合があるため、最新は公式情報でご確認ください。

従業員が企業価値の上昇を共有する ― キオクシア・SpaceX・サムスン

渡辺:もう1つ注目されているのが、会社の従業員がその企業価値の上昇を直接共有するという動きです。

ここから挙げられた3つの事例が、いずれも具体的で印象に残りました。

渡辺:例えばキオクシアホールディングスでは、ベインキャピタルによる買収後、従業員にストックオプションが付与されました。今年6月には社員600人が10億円以上の価値を手にしたということで「10億り人」になった、というニュースも報じられました。

浜田:話題になりましたねー。

渡辺:アメリカのSpaceXの買収でも、株式などを保有していた従業員4,400人がミリオネアになったと報じられています。対象になったのが経営者やエンジニアだけではなく、溶接工や製造現場の技術者など現場から会社を支えてきた人たちも含まれていました。また韓国のサムスン電子でも、半導体部門の社員への報酬が大きく増えて、平均で5,000万円前後、一部では6,000万円を超える水準になったと言われています。

企業 出来事 規模
キオクシアホールディングス ベインキャピタルによる買収後、ストックオプション付与。今年6月に報道 社員600人が10億円以上
SpaceX(米) 買収により保有株式が現金化。溶接工・製造技術者も対象 従業員4,400人がミリオネア
サムスン電子(韓) 半導体部門の社員報酬が大幅増 平均5,000万円前後、一部6,000万円超

注目したいのはSpaceXの例です。溶接工や製造現場の技術者が含まれていたという一点が、この変化の本質を表しています。企業価値の上昇を株主と経営陣だけで分け合うのではなく、現場まで届ける。「新富裕層」とは、富の分配ルートそのものが変わりつつあることの表れなんですね。

📌 用語解説:ストックオプション

あらかじめ決められた価格で自社株を買える権利。株価が上がるほど権利行使時の利益が大きくなります。給与とは別に企業価値の上昇分を従業員が受け取る仕組みで、未上場企業では上場やM&Aといった「出口」が訪れて初めて現金化される点が特徴です。

📌 過去放送との文脈リンク

SpaceXについては、6月18日放送で永堀真氏が上場をめぐる「未来への投資」として深掘りしていました。あの回は投資家から見たSpaceXでしたが、今回の渡辺氏の指摘は従業員から見た同じ出来事です。巨大な未上場企業の価値が現金化されるとき、それは投資家のリターンであると同時に、4,400人の人生を変える出来事でもあった――6/18と今回をセットで読むと、未上場企業への資金流入が持つ意味が立体的に見えてきます。

国境を越える富裕層 ― 東京は世界3位

渡辺:一方で、富裕層の資産が国境を越えるという動きが強まっています。

浜田:国境を越えるとはどういうことでしょうか?

渡辺:国税庁によると2024年分の国外財産調書が、提出件数そして総財産額ともに過去最多を更新しました。

世界を見ると、2025年、国境を越えて移住するミリオネアが14万2,000人に上ると予測されました。これも過去最高の水準です。

浜田:流入人数ではどこが多いんでしょうか?

渡辺:1位となったのはUAEで、約9,800人の純流入、約10兆円の資産が持ち込まれると予測されました。日本でも600人の純流入が見込まれておりまして、東京の存在感も高まっています。2025年の世界の富裕都市ランキングでは、東京のミリオネア人口は約29万2,300人で世界3位。国際金融センター指数でも、以前はランキングが落ちていたんですが、東京がトップ10に返り咲きました。ただし、10億ドル以上の資産を持つ超富裕層の数では東京は上位に入っていないということですね。

項目 数字
国境を越えて移住するミリオネア(2025年予測) 14万2,000人(過去最高)
純流入1位 UAE:約9,800人/約10兆円
日本の純流入見込み 約600人
東京のミリオネア人口 約29万2,300人(世界3位)
東京の国際金融センター指数 トップ10に返り咲き
東京の超富裕層(10億ドル以上) 上位には入らず

「人数では世界3位なのに、超富裕層では上位に入らない」――この非対称が東京の現在地を物語っています。厚い中間的な富裕層はいるが、突き抜けた層は他都市に集まっている、という構図ですね。

渡辺:一方でドバイやシンガポール、香港などは、税制やビザだけではなくて、金融インフラ、教育、住環境など、生活に関わる環境全体を整えることで富裕層を積極的に呼び込んできました。

税金だけでは動かない ― 出国税と購買力の壁

浜田:海外に移住すると税負担が軽くなるっていうことなんですか?

渡辺:そう思われる方が多いと思うんですけども、そういう単純なお話ではなくて、日本から海外へ移住する場合も、1億円以上の有価証券を保有する一定の方には国外転出時課税、いわゆる出国税が適用されます。ですので、単純に税金が安いところに行ければいいという話ではなくて、生活環境や教育、資産管理など、様々な要素を含めて考える必要があるかと思います。

そしてもう一つ、見落とされがちな論点が示されました。

渡辺:今、円安もありますし、インフレもあるので、同じ金額のお金を持っていたとしても、日本で暮らす場合と欧米で暮らす場合では、実際の購買力が大きく違います。ですので最近の富裕層は、生活の全てをひとつの国に集約するのではなく、暮らす国、事業を行う国、子どもを教育する国、資産を管理する国という風に、目的に応じて複数の国を使い分けるような動きも広がっていると言われています。

「1億円の資産」と言っても、円建てである限り、円安が進めば海外での購買力は目減りします。額面ではなく、どの通貨で、どこで使うのか。ここまで考えるのが新しい富裕層の発想だというわけですね。

📌 用語解説:国外転出時課税(出国税)と国外財産調書

  • 国外転出時課税:1億円以上の有価証券等を保有する一定の居住者が国外に転出する際、売却していない含み益に対して課税される制度。適用要件は個別の事情で変わるため、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
  • 国外財産調書:年末時点で国外に一定額以上の財産を持つ居住者に提出が義務づけられる書類。件数・総額がともに過去最多を更新したことは、資産の国際化が統計に表れた証拠と言えます。

浜田:実際、お客様の中ではこういう方々いらっしゃいますか?

渡辺:最近、日本から海外へ移住された方や、逆に海外から日本に来られて今住まれている方の数が非常に増えてきました。これからは、大きなお金を持った時にどのように資産運用すればいいかという話だけではなく、相続や海外の制度、さらには企業や国の資本政策まで考える、こうした視点がますます重要になってくるのではないでしょうか。

📌 投資視点まとめ

  • 富裕層の増加は「株高の結果」。相場が下げれば同じ勢いで減り得る層でもある
  • 持株会は勤務先と資産を二重に賭ける構造。集中リスクは意識しておきたい
  • ストックオプションは「出口」で初めて現金化される。未上場なら上場やM&Aまで価値は確定しない
  • 東京は人数では世界3位、超富裕層では上位外。厚みはあるが突出層が薄い
  • 移住は税金だけで判断しない。1億円以上の有価証券保有者には出国税が適用され得る
  • 額面より購買力。円建て資産は円安局面で海外での実質価値が目減りする

—

ヴェストラ

桁違い!!羨ましいです(涙)

フィリップ・キャピタル証券からのお知らせ

放送内では、社名変更の完了が改めて案内されました。

フィリップ・キャピタル証券は2026年8月24日をもちまして、社名を「フィリップ証券株式会社」から変更しました。

長年にわたって培ってきた信頼、誠実さ、そして専門性を礎に、いま新たなステージへと進む――というのが今回のメッセージです。番組内では「証券会社という既存の枠組みにとどまることなく、世界と未来をつなぐ金融のパートナーとして、これからも進化を続けます」と語られていました。ブランドメッセージ 「あなたとともに次のステージへ。Your Partner in Finance」 は変わりません。

フィリップ・キャピタル証券は「わかる」「かわる」をブランドコンセプトに、対面営業、オンライン、法人営業、上場支援と、お客様に合ったご提案が可能な体制を整えています。投資のことがわかる、選択肢がわかる、そして自分に合った次の一手が見えてくる。投資がわかると意識が変わる。意識が変わると世界が変わる。

当社が取り扱う商品等には、価格、金利水準、為替等の変動や発行者等の信用状況等の悪化等により、投資元本以上の損失(元本損失・元本超過損)が生じるおそれがあるものを含みます。投資にあたっては、契約締結前交付書面または目論見書等を必ずよくお読みのうえ、お取引ください。フィリップ・キャピタル証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第127号

—

後半テーマ:愛知・名古屋アジア大会の経済効果

後半はお電話での出演、エコノミストでBRICs経済研究所代表の門倉貴史氏です。第20回愛知・名古屋アジア大会は今月9月19日に開幕、10月4日までの16日間にわたって開催されます。日本での夏季大会開催は、1958年の東京、1994年の広島に続いて3度目です。

45か国・1万7,000人 ― 宿泊施設不足はなぜ起きたか

浜田:今回の愛知大会ではどれぐらいの人数の方が参加されてるんでしょうか?

門倉:大会主催者でありますアジア・オリンピック評議会が今年の8月に発表したところによりますと、今回は45か国・地域から選手ら1万1,000人、チーム役員らが6,000人、合計で1万7,000人以上が集まることになっています。ただ、開催都市契約では選手団は1万5,000人が上限ということになっておりましたので、開催間際になって宿泊施設が不足するという事態が発生してしまいました。

浜田:なぜ参加人数が当初の想定に比べて大幅に増えるということになったんでしょうか?

門倉:サッカーと卓球の要素を組み合わせた競技テックボールと、ラケット競技のパデルがアジア大会の正式競技として今回追加されたことで、参加者数が当初の予定を2,000人上回る1万7,000人近くになったということなんですけれども、人数が増えることをあらかじめ予想して、名古屋市内のホテルの部屋をバックアップとして多めに確保していたということがありまして、最終的には1万7,000人の参加者全員に宿泊場所を保障することが可能になったようです。

新競技2つの追加が、そのまま2,000人の増加として跳ね返る。国際大会の運営コストは、競技数という「入口」の決定で大きく動くということがよくわかる事例です。

📌 用語解説:テックボールとパデル

  • テックボール:湾曲した卓球台のような専用台を使い、手を使わずにボールを打ち合う競技。サッカーと卓球を掛け合わせた発想から生まれました。
  • パデル:ガラスやフェンスに囲まれたコートで行うラケット競技。テニスとスカッシュの中間のような性質を持ち、スペインや中南米を中心に競技人口が急増しています。
  • いずれも比較的新しい競技で、こうした種目の追加が参加規模と運営経費を押し上げる要因になります。

大会経費は当初の3.5倍、3,700億円へ

浜田:アジア大会を名古屋で開催するにあたりまして、経費というのはどれくらいの金額になるんでしょうか?

門倉:2020年の時点では、大会経費というのは約1,000億円と見積もられていたんですけれども、その後、競技数の増加、建築資材の高騰、人件費の上昇、さらには近年の物価高騰などの影響が重なって、合計予算が当初から3.5倍以上の3,700億円まで膨らむことになりました。

門倉:東京オリンピックですとかリニア中央新幹線のプロジェクトにおきましても、当初予算に比べて実際にかかる予算は大きく膨らんでおりまして、やはり物価が上昇している局面でインフラ整備を行っていくと、準備期間が長くなるほど経費が大きく膨らんでしまう傾向があるようです。

内訳も具体的に示されました。

区分 金額 内容
直接的な大会経費 2,980億円 下記を含む
・選手村代替 520億円 クルーズ船・コンテナハウスの建設費
・競技関係 490億円 会場設営、備品など
・警備費 約880億円 全国から17万人の警備員
関連経費 約700億円 PR活動など
・うち式典費用 70億円以上 パロマ瑞穂スタジアムでの開会式など
合計 約3,700億円 当初見積もりの3.5倍以上

経費の最大項目が警備費880億円だという点は、注目に値します。

選手村代替のクルーズ船520億円よりも、競技関係の490億円よりも大きい。17万人の警備員という数字が、現代の国際大会が背負うコスト構造を端的に示しています。

財源2,600億円の不足と、財政調整基金

門倉:大会経費が大きく膨らんでしまったことで、財源が2,600億円ほど不足するということになってしまいまして、この不足分については、災害時などに使用する愛知県の貯金に当たります財政調整基金などを活用するということになっています。

ここは冷静に受け止めておきたい部分です。財政調整基金は本来、災害や急な税収減に備えるための備えです。それを大会経費の穴埋めに充てるということは、将来の不測の事態への余力を、今回のイベントに前倒しで使うという判断を意味します。

📌 用語解説:財政調整基金

自治体が年度間の財源の不均衡を調整するために積み立てておく資金。災害対応や急激な税収減といった不測の事態に備える「貯金」にあたります。取り崩せば当座の財源は確保できますが、残高が減るぶん、将来のリスク耐性は下がります。

経済効果3兆6,000億円とレガシー効果

浜田:これは費用に見合うだけの経済効果というのは期待できるんでしょうか?

門倉:アジア大会が開催されますと、チケット代ですとか観客・選手が名古屋に来て消費すること、施設を建設することなどによって、直接的な経済効果が発生します。さらに、アジア大会の開催によって愛知・名古屋のブランド価値が高まることで、将来的な経済成長に繋がっていく、いわゆる長期的な経済効果であるレガシー効果というものも期待できます。

門倉:愛知県が昨年末に発表した資料によりますと、今回のアジア大会の経済波及効果は、大会の招致が決まった2016年から大会10年後の2036年までの累計20年間で、全国で3兆6,000億円に上ると試算されています。愛知県内では1兆8,000億円の経済効果となると。新規の雇用創出は、愛知県内で17万人弱、全国では27万人超になることが見込まれています。

指標 全国 愛知県内
経済波及効果(2016〜2036年の20年累計) 3兆6,000億円 1兆8,000億円
新規雇用創出 27万人超 17万人弱

経費3,700億円に対して経済効果3兆6,000億円。約10倍という数字だけ見れば圧倒的ですが、門倉氏はここに慎重な注釈を添えました。

門倉:このアジア大会後に発生するレガシー効果なんですけれども、これは予測的な要素が非常に強いですので、不確実性は高いんですけれども、愛知県の推計通りの経済効果が実際に発生するということであれば、この巨額に上る大会経費に十分見合うだけの経済効果ということは言えるかと思います。

「推計通りに発生するのであれば」という条件付きである点が重要です。しかも対象期間は20年累計。確定している支出3,700億円と、20年かけて実現するかもしれない効果3兆6,000億円を、そのまま並べて比べることはできません。

📌 用語解説:経済波及効果とレガシー効果

  • 経済波及効果:ある支出が原材料調達や雇用を通じて次の消費を生み、連鎖的に波及していく総額。産業連関表をもとに試算されます。
  • レガシー効果:大会後に残るインフラ、知名度、人材などが長期的に生む効果。定義が幅広く、試算の前提次第で金額が大きく変わる性質があります。
  • どちらも実額の売上ではなく推計値である点は、押さえておきたいところです。

📌 過去放送との文脈リンク

国際的なスポーツイベントが相場に与える影響は、6月11日放送で田嶋智太郎氏が「W杯特需銘柄」として取り上げていました。あの回が特需で伸びる個別企業に焦点を当てていたのに対し、今回の門倉氏は開催地の財政と長期効果という土台の部分を見ています。6/11の「銘柄目線」と今回の「自治体目線」を重ねて読むと、大型イベントというテーマの光と影が掴めてきます。

メダル、ホームアドバンテージ、そして都市鉱山

浜田:今回、日本人選手の活躍も期待できそうですよね。

門倉:前回中国で開催された杭州大会では、メダル総数で中国、韓国に次ぐ188個を獲得しているんですけれども、金メダルの数だけで見ると中国に次ぐ第2位となっていました。今回は日本での開催ということもありまして、メダルの量産が期待されるところになっています。

浜田:やはり開催国になりますとメダルの獲得数は多くなるということなんでしょうか?

門倉:夏季オリンピックを対象にした過去の研究によりますと、オリンピックの開催国ではホームアドバンテージというものが発生して、選手のパフォーマンスが向上して、より多くのメダルを獲得できるということが明らかになっています。具体的なデータで見ると、夏季オリンピックの開催国は獲得メダル数が平均して1.8%増加するということです。

そしてもう一つ、今回の大会ならではの取り組みが紹介されました。

門倉:今回のアジア大会では、都市鉱山からリサイクルされる金属を入賞メダルの製造に活用する、リサイクルメダルプロジェクトが推進されています。都市鉱山というのは、使用済みのスマートフォンですとかパソコン、家電製品の中に含まれる金、銀、銅を鉱山に見立てて呼んでいるんですけれども、この都市鉱山は鉱石から金属を採掘する場合に比べて遥かに高い濃度で、効率よく回収できるというメリットがあります。2021年に開催された東京オリンピックでも、回収された金属のみで計5,000個のメダル全てを製造しています。

📌 用語解説:都市鉱山

使用済み電子機器に含まれる貴金属・レアメタルを、地中の鉱山に見立てた呼び方です。天然の鉱石に比べて含有濃度が高いのが特徴で、採掘に伴う環境負荷も抑えられます。資源の乏しい日本にとっては戦略的な意味を持つ分野です。

浜田:将来的に見込まれる3兆6,000億円という経済効果、都市鉱山を活用したリサイクルメダルの取り組みなど、地域活性化ですとか持続可能な社会に向けた大きなレガシー効果への期待も高まりそうですね。

📌 投資視点まとめ

  • 大型イベントの経費は準備期間が長いほど膨らむ。東京五輪・リニアも同じ傾向とされる
  • 最大の費目は警備費(約880億円・17万人)。施設より人件費が効く構造
  • 経済効果の試算は「推計」。3兆6,000億円は20年累計かつレガシー効果を含み、不確実性が高いと本人も明言している
  • 確定支出と推計効果を単純比較しない。3,700億円は確定、3兆6,000億円は条件付きの将来値
  • 財政調整基金の取り崩しは、将来のリスク耐性を今に前倒しで使う判断
  • 都市鉱山は資源循環の投資テーマ。鉱石より高濃度で回収できる経済合理性がある

—

まとめ:富は「どこから来て、どこへ向かうのか」

富裕層の話と、スポーツ大会の話。テーマはまるで違いますが、両方に共通していたのは「富はどこで生まれ、誰に分配され、どこへ向かうのか」という問いでした。

渡辺礼子氏が示したのは、富の生まれ方と届き方が変わりつつあるという事実です。企業オーナーや相続に代わって、持株会やNISAで積み立てていた会社員が「いつの間にか富裕層」になり、キオクシアの社員600人が10億円を手にし、SpaceXでは溶接工までがミリオネアになった。そして生まれた富は国境を越え、UAEへ、東京へと動いていきます。

門倉貴史氏が語ったのは、富を意図的に作り出そうとする側の話でした。3,700億円を投じて、20年で3兆6,000億円を生み出す。門倉氏自身が「予測的な要素が非常に強い」と言い添えたとおり、レガシー効果とは、まだ存在しない富に対する見積もりです。確定した支出と条件付きの将来値を並べて判断する――これは私たちが投資判断をするときの構造と、まったく同じですよね。

富は自然に増えるものではなく、誰かが取ったリスクの結果として生まれる。株高が富裕層を増やしたのも、ストックオプションが現場の技術者を億万長者にしたのも、愛知県が基金を取り崩してまで大会を開くのも、すべて「先に賭けた」結果です。

「投資がわかると意識が変わる。意識が変わると世界が変わる。」

資産が国境を越え、同じ1億円でも暮らす国によって購買力がまるで違う――そんな時代において、フィリップ・キャピタル証券の誇る高機能プラットフォーム「MT5」による自動売買(EA)を活用し、通貨や市場をまたぐ取引をシステムに任せるのは、有力な選択肢のひとつです。為替が動くたびに一喜一憂するのではなく、あらかじめ決めたルールに執行を委ねる。これからの「投資の旅(ジャーニー)」をサバイブする鉄則です。

🔗 フィリップ・キャピタル証券のMT5でシステムトレードをはじめる

—

よくある質問(FAQ)

Q1. 「いつの間にか富裕層」には、誰でもなれるのでしょうか?

番組では、持株会やNISAで株式を積み立てていた会社員が、株式市場の上昇と重なって純金融資産1億円を超えた例が紹介され、こうした層が富裕層世帯の1割から2割程度を占めると推定されていました。入口が広く開かれているのは確かです。ただし前提にあるのは長期の積立と相場の上昇であり、相場が下げれば同じ仕組みで資産は減ります。「誰でも確実に」という性質のものではありません。

Q2. 持株会で自社株を買うことに、注意点はありますか?

購入額に会社の奨励金が上乗せされるケースが多く、自社の成長をそのまま資産に反映できるのが魅力です。一方で、勤務先と資産の両方を同じ会社に賭ける構造になります。業績が悪化すれば給与と資産が同時に打撃を受けるわけです。番組のキオクシアやSpaceXは成功例ですが、逆もあり得るという前提で資産全体のバランスを見ておくのが無難とされています。

Q3. 海外に移住すれば、税負担は軽くなりますか?

渡辺氏は「そういう単純なお話ではない」と明確に否定しています。日本から海外へ移住する場合、1億円以上の有価証券を保有する一定の方には国外転出時課税(出国税)が適用されます。売却していない含み益に課税される仕組みです。適用要件は個別の事情で変わるため、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

Q4. アジア大会の経済効果3兆6,000億円は、そのまま信じてよいのでしょうか?

慎重に受け取るのが適切です。門倉氏自身が「予測的な要素が非常に強く、不確実性は高い」と述べています。この数字は2016年から2036年までの20年累計で、長期的なレガシー効果を含んだ試算です。一方で経費3,700億円は実際に支出される確定額です。性質の異なる2つの数字なので、単純な引き算で損得を判断することはできません。

Q5. 資産が国境を越える時代に、個人投資家はどう備えればよいでしょうか?

番組で示されたのは、額面ではなく購買力で考えるという視点でした。円安とインフレが同時に進む局面では、円建て資産だけを持っていると海外での実質的な価値が目減りしていきます。通貨や市場を分散させる発想が以前より重要になっている、ということですね。フィリップ・キャピタル証券が提供するMT5なら、FX・CFDを通じて複数の通貨や市場にアクセスでき、EA(自動売買プログラム)で執行をルールに任せることもできます。まずは口座を開設して、実際のプラットフォームに触れてみてはいかがでしょうか。

—

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次