2026年の株式市場は、AIブームの「第二幕」とも言うべき局面を迎えています。
推論・エージェントAIへの注目が高まる中、NVIDIAの牙城は本当に揺らいでいるのか。そして、本日ついに開幕するサッカーワールドカップ2026北中米大会は、日本株にどんな特需をもたらすのか。
前半はフィリップ証券リサーチ部の三角友幸さんが、AIチップをめぐる米国株の構造変化と日本株の乱高下の背景を鋭く分析。後半は経済アナリストの田嶋智太郎さんが、W杯で動く注目銘柄を具体的な証券コードとともに解説してくださいました。盛りだくさんの内容を、じっくりおさらいしていきましょう。
🎙 番組概要
番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
放送日:2026年6月11日(木)
提供:フィリップ証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
パーソナリティ:浜田 節子 氏
コメンテーター:
前半:三角 友幸 氏(フィリップ証券 リサーチ部)
後半:田嶋 智太郎 氏(経済アナリスト)
前半テーマ:AIチップ覇権の行方と米日株式市場の読み方
NVIDIAは本当に「軟調」なのか? 数字で見る実態
4月後半から5月にかけての決算シーズン、半導体関連企業の業績に市場の目が集まりました。好決算にもかかわらず株価が冴えない企業も散見され、「AIブームは終わったのか?」という声も聞こえてきます。三角さんはまず、NVIDIAの現状を冷静な数字で整理しました。
浜田:NVIDIAの株価の伸びが軟調に見えるのはなぜでしょうか?
三角:2027年第1四半期の決算発表日(5月20日)を基準とした過去1年間の日次平均リターンを年率化すると、約25%になります。
S&P500のパフォーマンスを約3%上回っています。AMD・ブロードコムと比較しても、売上規模・利益率・売上成長のいずれも上回っていることに変わりはありません。株価が軟調に見えるのは、時価総額が世界最大になってしまったことが主因だと思います。
つまり「軟調」と感じるのは、過去の爆発的な上昇と比較しているからであって、絶対値で見れば依然として力強い成長が続いているということです。
軟調のもう一つの要因として三角さんが挙げたのが、「推論・エージェントAIへの注目シフトに伴い、技術的な主役がGPUからCPU・カスタムチップへ移行するのではないか」というシナリオです。このシナリオが投資家心理に影を落としているというわけです。
📌 用語解説:GPU・CPU・カスタムチップの違い
- GPU(グラフィックス処理装置):もともとゲームの画像処理用に開発されたチップ。膨大な並列計算が得意で、AIのデータ学習(トレーニング)に圧倒的な強みを持つ。NVIDIAが市場を寡占。
- CPU(中央処理装置):コンピューターの「頭脳」。複雑な命令を順番に処理するのが得意で、推論(学習済みAIが答えを出すプロセス)やエージェントAIのような逐次的タスクとの相性が良い。
- カスタムチップ(TPU・Trainium等):特定の用途に最適化した専用設計チップ。汎用品より効率が高い反面、開発コストが巨大。AWSのTrainium・GravitonやGoogleのTPUが代表例。
カスタムチップはGPUを「置き換える」のか?
AWSは自社設計チップ「Graviton(グラビトン)」「Trainium(トライニウム)」を展開しており、GPU比で優れたコストパフォーマンスを謳っています。これがNVIDIAの優位性を崩すのでは、という懸念が広がっているのです。
浜田:NVIDIAの製品がその他チップに置き換えられるということはあるのでしょうか?
三角:「置き換える」というより「補っている」というのが実態ではないかと思います。AIのデータ学習からエージェントAIとして末端ユーザーに届くまでの全体のワークロード工程の物量は、今後も増え続けるはずです。エージェントや推論過程が熱くなればなるほど、それに比例して学習過程もスケールアップし、結果的にGPUを多く買うことにつながるのではないかと思います。
この「補完関係」という視点は重要です。カスタムチップが増えるということは、AIの活用シーン全体が拡大しているということ。その裏側では学習用GPUの需要も比例して膨らんでいく——という構造的な読み筋です。
実際、三角さんが示した数字を見ると、AWSの売上に対する設備投資比率は低下傾向にあります。つまり「カスタムチップが最大効率を発揮している」とは言い切れず、GPUへの依存は当面続くという見方を裏付けています。
さらに、2027年第1四半期のNVIDIAのハイパースケーラー向け売上は379億ドル、前年比115.2%増という著しい数字が出ています。AWS・Microsoft AzureといったクラウドIT大手が引き続きNVIDIA製品を大量調達していることの証左です。
📌 用語解説:ハイパースケーラーとは
AWS(Amazon)、Microsoft Azure、Google Cloud、Metaなど、世界規模でデータセンターを運営する超大手クラウド事業者のこと。AI開発に必要な膨大な計算リソースを提供しており、NVIDIAにとって最大の顧客群。
NVIDIAの次の評価ポイントは「Vera Rubin」と「Intel」
三角さんによれば、NVIDIAの優位性が継続するかどうかを判断する上での具体的なチェックポイントが二つあります。
少なくともこれが本格展開されるまでは、NVIDIAの優位は揺るがないとの見立てです。
二つ目は、NVIDIAが買収したGroq(グロック)のLPU(言語処理ユニット)を実装した「Feynman(ファインマン)」のパフォーマンスと、他社カスタムチップとの比較。そして、NVIDIAが出資するIntelのファウンドリ(半導体製造受託事業)が、チップの微細化やパッケージング構造に対応できるかどうかです。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年4月16日放送(笹木和弘氏)では「生成AIからエージェントAIへの進化に伴い、主役がGPU(NVIDIA)からCPU(Intel/AMD)へ回帰する兆候がある」という分析が紹介されました。今回の三角さんの解説は、その流れを踏まえつつ「ただしGPU需要の絶対量は増え続ける」という一歩進んだ視点を加えたものと言えます。短期の主役交代論に惑わされず、全体のワークロード拡大という大局観を持つことが重要という点で、両回の見解は一致しています。
OpenAI・スペースX・Anthropicの上場と指数入りの行方
ベン・ホロウィッツ氏(アンドリーセン・ホロウィッツ設立パートナー)の「SaaSのCは巨体IPOの準備だ」という発言が話題を集めています。OpenAI・スペースX・Anthropicの上場と、その後の指数入りについて三角さんはどう見ているのでしょうか。
三角:大型AI企業が上場してガバナンスの透明性が高まることはプラスです。
指数入りについては、ナスダック100への組み入れが現実性が高いと思います。2026年3月末に「ファーストエントリールール」が緩和され、時価総額が指数構成銘柄の上位40位以内に入れば、最短で上場後15営業日で組み入れられることになりました。現在のボーダーラインは約1,300億ドル台ですが、OpenAI・スペースX・Anthropicはいずれも1兆ドル超での上場が噂されていますので、条件を満たせば早期採用が実現するのではないかと思います。
一方、多くの機関投資家が運用ベンチマークとするS&P500については、2026年5月にS&Pダウジョーンズ社が採用条件緩和の諮問を発表しましたが、6月4日に「いかなる条件緩和も行わない」と撤回しています。
パッシブ運用(インデックス連動型)のマネーが本格流入するのは、条件を満たしてから約12ヶ月後になる見通しです。
📌 投資視点まとめ
- ナスダック100への早期採用は現実的シナリオ→上場直後のモメンタムに注目
- S&P500採用は条件成立から約1年後→中長期の資金流入は段階的
- 上場時の時価総額規模次第では、既存大型グロース株への資金シフトが一時的に発生する可能性もある
日本株の乱高下——「保守的見通し」問題と海外投資家の目線
三角:東証の日々の取引額の約6〜7割は海外投資家からの委託取引です。海外AIブームの影響を受けて、日本の製造装置や素材関連株の買い材料を探している状況といえます。ただ、乱高下の要因として見落とせないのが、海外投資家と日本企業の「目線の違い」です。
浜田:具体的にはどういうことでしょうか?
三角:日本企業の業績見通しが保守的になりがちという点が大きいです。海外投資家も「保守的見通しは単なる不利ではない」と学習していますので、下げた時に買い直すという動きにもつながりやすいです。一方で、不確実性が高い中で見通しを保留したり、特殊損益を除いた数字のみ開示するような姿勢が「危機感の薄さ」と受け取られるケースがあります。理想は、複数のシナリオとそれぞれの業績パスを投資家に提示することではないかと思います。
化学素材メーカーについても重要な指摘がありました。「もともと自社の得意分野であるマテリアル・ケミカル技術の幅を拡張した結果、半導体関連にまで間口を広げた経緯があります。そのため、利益率の高い半導体分野のみを切り離して資本効率を高めるという位置づけがしづらい」という構造的な課題です。
📌 投資視点まとめ
- 日本株の下落局面は海外機関投資家の「買い直し」の機会になりやすい
- 決算発表で注目すべきは「数字」だけでなく「見通しの出し方」
- 複数シナリオを開示する企業は、海外投資家からの評価が相対的に高くなりやすい
フィリップ証券からのお知らせ

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当社が取り扱う商品等には、価格変動等により元本損失・元本超過損が生じるおそれがあります。投資にあたっては、契約締結前交付書面等を必ずお読みください。フィリップ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第127号
後半テーマ:ワールドカップ2026特需——今動く注目銘柄はここだ

「テレビ需要のピークはもう過ぎた」——次の波を狙え
本日(日本時間6月12日)、サッカーワールドカップ2026北中米大会がいよいよ開幕します。今大会は参加チームが従来の32から48チームに拡大、決勝まで104試合という史上最大規模です。田嶋さんはまず、W杯特需の「第一波」の現状整理から始めました。
液晶パネルの大口取引価格は4ヶ月連続上昇が続いていましたが(4月時点で前月比+1%)、これはテレビメーカーがW杯向け買い替え需要を見越してパネル調達を急いだためです。しかし田嶋さんによれば、「5月時点でピークはすでに過ぎており、大画面テレビの購入ニーズも同様」とのこと。
では、開幕後に注目度が高まるのはどのセクターか。日本代表の善戦によって応援熱がさらに高まった場合の展開を、田嶋さんが具体的に解説しました。
日本代表の試合日程と「最注目カード」
日本代表の試合日程は以下の通りです。
- 6月15日(月)午前5時:vs オランダ
- 6月21日(日):vs チュニジア ←観戦しやすい最注目カード
- 6月26日(金)午前8時:vs スウェーデン
田嶋:一番観戦しやすいのは21日のチュニジア戦ですね。自宅や友人宅でキリンビールを片手に、あるいはパブリックビューイングで楽しむという流れが考えられます。
① 放映権を握る電通グループ(4324)
NHK・日本テレビ・フジテレビなどが電通から放映権を受けて地上波・BSで生中継します。
視聴者にとって嬉しい「地上波で見やすい大会」が実現した背景には、電通の戦略的な一括取得があります。
田嶋:肝心なのは、この放映権一括取得を武器に電通グループが広告主との関係を一層強化できるかどうかです。日本代表が勝ち進めば進むほど、広告出稿企業との関係性も強まり、広告関連収入の拡大が期待されます。当然、経済効果もどんどん高まっていくことになります。
📌 電通グループ(4324)業績・背景補足
電通グループは国内外の広告・マーケティング事業を展開する日本最大手。近年は国内広告の縮小傾向を受け、海外事業やデジタルマーケティングへの転換を加速させています。W杯の放映権一括取得は、広告主との包括的なスポンサーシップ交渉を有利に進める狙いがあり、大会期間中の広告収入増加だけでなく、その後の契約継続・拡大への波及効果も期待されます。
② パブリックビューイングの恩恵:ハブとイオン
英国風パブのハブや、イオンモール・イオンシネマでのパブリックビューイングも盛り上がりが期待されます。
田嶋さんは「観戦後にイオンでお買い物」という購買行動の連鎖にも注目しました。
また、三越伊勢丹のお中元ギフトセンターでは関連商品を展開、オンラインストアでは選手の直筆サイン入りユニフォーム(数十万円台)なども販売されています。
③ ゲームはコナミグループ(9766)——eFootball累計10億DL超
田嶋:コナミグループ(9766)の主力ゲーム「eFootball」が絶好調で、4月に累計10億ダウンロードを突破しました。今年3月のWBC開催時には「プロ野球スピリッツ エース」の売上が大幅に伸びた実績がありますので、今回のW杯でもeFootballのさらなる盛り上がりが期待されます。
📌 コナミグループ(9766)業績・背景補足
コナミはゲーム・スポーツ・フィットネス事業を展開する複合企業。eFootballは基本無料のモバイル・PC向けサッカーゲームで、従来の「ウイニングイレブン(PES)」ブランドから転換した後、グローバルで急成長しています。累計10億DLは、スポーツゲームとしては世界屈指の規模。W杯期間中はゲーム内イベントやコラボ施策が積み重なりやすく、課金収入の拡大が期待されます。FIFAとの公式ライセンス契約も保持しており、競合他社との差別化要因になっています。
④ スポーツ用品の二大注目株:ミズノ(8022)とアシックス(7936)
今大会、スポーツ用品株を読む上での重要な視点が「代表選手×スポンサーブランド」という組み合わせです。
日本代表レプリカユニフォームの需要は予想をはるかに上回るペースで拡大しています。アディダスジャパンが3月に発売した日本代表アウェイユニフォームは、発売から9週時点で前回大会比25倍という驚異的な売上枚数を記録。元々続いていた「フットボールシャツブーム」がW杯という大きな波乗り台を得た形です。
田嶋:テレビで観戦する際は、選手の足元にもぜひ注目してみてください。
田中碧選手はミズノのブランドアンバサダーを務めています。
📌 ミズノ(8022)業績・背景補足
ミズノは国内外でゴルフ・野球・サッカー用品を展開するスポーツ総合メーカー。近年は海外売上比率の向上と高付加価値製品へのシフトを進めており、足元の業績は好調です。田中碧選手はデュッセルドルフ(ドイツ)でプレーする日本代表の中核MFで、国際的な露出度が高く、ミズノブランドの海外認知向上に直結しています。サッカーシューズのみならず、トレーニングウェア等への波及購買も期待されます。
2023年にアシックスとアドバイザリースタッフ契約を締結した冨安健洋選手が、2年ぶりの代表復帰を果たします。
📌 アシックス(7936)業績・背景補足
アシックスは「ランニングシューズの世界的ブランド」として急速に地位を固め、特に欧米市場での成長が著しい企業です。高級ブランドライン「オニツカタイガー」もグローバルで好評。冨安選手はアーセナル(イングランド)所属の世界的なディフェンダーで、欧州・アジアを問ず認知度が高く、アシックスの海外ブランド戦略との相性は抜群です。テレビ中継で「アシックスのスパイク」が映し出されるたびに、ブランドの露出効果が積み上がります。
⑤ 販売チャネルとしてのABC-MART(2670)
レプリカユニフォーム・サッカーシューズ・各ブランドのスニーカー類の主要販売チャネルとして、ABC-MART(2670)にも注目です。ミズノ・アシックスに限らず、国内外の複数スポーツブランドを幅広く取り扱っており、W杯期間中の来客増加と購買単価上昇の両面で恩恵を受けやすいポジションにあります。
📌 過去放送との文脈リンク
2026年4月30日放送では、国内市場の頭打ちを背景にグローバルへ打って出る「日本式カレー(ココイチ・ゴーゴーカレー)」のブランド戦略が紹介されました。ミズノ・アシックスのW杯特需も、本質的には同じ構造です。国内市場の限界を超え、W杯という世界的プラットフォームを通じて海外ブランド認知を高める——日本企業のグローバル戦略という大きな文脈でとらえると、一層興味深いテーマです。
まとめ:AIチップとW杯特需——2026年夏相場の二つの軸

前半の三角さんの分析からは、「NVIDIAの優位はまだ崩れていない、ただし時価総額の重力には要注意」という冷静な視点が得られました。
AIの全体ワークロードが拡大し続ける限り、GPU需要の絶対量は増え続けるという構造的な読み筋は、長期投資家にとって重要な羅針盤になるはずです。
OpenAI等の大型IPOについては、S&P500採用は当面先としつつも、ナスダック100への早期組み入れは現実的なシナリオとして頭に入れておきたいところ。上場後の指数採用タイミングは既存大型グロース株への資金フローにも影響しますので、引き続き注目です。
後半の田嶋さんが示したW杯関連銘柄は、「テレビ購入はピーク済み→次はサービス・コンテンツ・スポーツ用品」という明快なシフトが軸でした。日本代表の勝ち上がり次第でモメンタムが加速する銘柄群として、以下を改めて整理しておきましょう。
| 銘柄 | コード | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 電通グループ | 4324 | 放映権一括取得→広告収入拡大 |
| コナミグループ | 9766 | eFootball 10億DL超→課金収入増 |
| ミズノ | 8022 | 田中碧選手アンバサダー→シューズ需要 |
| アシックス | 7936 | 冨安健洋選手契約→海外ブランド露出 |
| ABC-MART | 2670 | スポーツ用品の主要販売チャネル |
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