円キャリーからスイスキャリーへ、フランス財政危機とユーロの行方——調達通貨の地殻変動を読む【2026年10月8日放送】

低金利の円を売って高金利通貨を買う「円キャリートレード」。

長く続いたこの定番の取引で、今年は大きな変化が起きています。調達に使われる通貨(売られる通貨)が、円からスイスフランへ移りつつあるのです。

前半はフィリップ・キャピタル証券オンライン事業本部マルチプロダクツ部長・工藤正剛氏が、この「キャリートレードの主役交代」の背景と、スイスキャリーに潜むリスクを解説します。2015年のスイスフランショックを現場で経験した工藤氏ならではの警告は、FXトレーダーにとって必聴です。

後半はロンドン在住のFXトレーダー・松崎美子氏が、急騰するフランス国債利回りの裏側を現地目線で読み解きます。予算案をめぐる攻防、ハングパーラメント(与党が過半数を持たない議会)、2027年大統領選、そして松崎氏が「ユーロより何より一番怖い」と語る円高リスクまで、1年先を見据えた視点が満載の回です。

🎙 番組概要

  • 番組名:投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」
  • 放送日:2026年10月8日(木)
  • 提供:フィリップ・キャピタル証券(ユアパートナー・イン・ファイナンス)
  • パーソナリティ:浜田 節子 氏
  • コメンテーター:
    • 前半:工藤 正剛 氏(フィリップ・キャピタル証券 オンライン事業本部 マルチプロダクツ部長)
    • 後半:松崎 美子 氏(ロンドン在住FXトレーダー)

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目次

前半テーマ:キャリートレードの変化——調達通貨は円からスイスフランへ

そもそもキャリートレードとは

まずは基本の確認からです。工藤氏はキャリートレードをこう定義しました。

工藤:キャリートレードとは、低金利の通貨で資金を借りて、高金利の通貨や資産に投資し、金利差を利益として狙う取引です。これまでは低金利の円を売って高金利通貨を買い、金利を稼ぐという円キャリートレードの手法が主流でしたが、今年に入って変化しているように思います。単刀直入に申しますと、調達通貨、つまり売る通貨が円からスイスフランに変わってきているようです。

📌 用語解説:キャリートレードと調達通貨とは

キャリートレードは、金利の低い通貨を借りて(売って)、金利の高い通貨や資産で運用し、その金利差で利益を狙う取引のこと。FXでは「スワップポイント」として日々金利差を受け取れる。このとき売る側(借りる側)の通貨を「調達通貨」と呼ぶ。長年、世界の調達通貨の代表は金利がほぼゼロだった日本円だった。

円キャリーが「安心して持てなくなった」理由

なぜ円が調達通貨の座を降りつつあるのか。工藤氏はその理由を、日銀の利上げと当局の発言に見出します。

工藤:2024年3月以前の円のゼロ金利時代は、円キャリーが全盛の時代でした。変な言い方かもしれませんが、市場は日本銀行が利上げしないことに全幅の信頼を置いていたんですね。ところがその後、日本銀行が徐々に利上げして、現在の政策金利は1.25%まで上がってきています。ただ単純に政策金利を比較すれば、米国が約4%、欧州2.5%ですので、まだ金利差はあります。

金利差はまだ残っています。それでも円キャリーのリスクは高まっていると工藤氏は言います。

工藤:しかしながら、昨今のベッセント財務長官、片山財務大臣、三村財務官の発言を聞くたびに、誰でも円キャリートレードのリスクが高くなっていると感じていると思います。円キャリートレードの収益の目的は、いわゆるスワップポイントで稼ぐことです。ですから円安が長期間続く、もしくは大幅な円高にならないことが重要になります。現在のように当局関係者が協調して円安を阻止すると言っている状況では、スワップポイントで稼いだ金額が円高によりあっという間になくなってしまうリスクが大きく、安心してオーバーナイト(ポジションを翌日に持ち越すこと)できない状況のように感じます。

コツコツ積み上げたスワップ収益が、一度の円高で吹き飛ぶ。8月に実施された28年ぶりの日米協調介入を経験した市場にとって、このリスクはもはや机上の話ではありません。

📌 過去放送との文脈リンク

8/6放送では山中康司氏が「28年ぶりの日米協調介入」の舞台裏を解説し、当局は最終的に155円割れを目指しているのではと分析しました。工藤氏が語る「当局が協調して円安を阻止すると言っている状況」は、まさにこの協調介入以降の新しい環境を指しています。また7/30放送では工藤氏自身が「3年間で政策金利がゼロから1%へ」という変化を総復習していました。今回はその続きとして、金利と介入リスクの両面から円キャリーの終わりの始まりを描いた回と言えます。

スイスフランが「新しい調達通貨」になる理由

では、なぜスイスフランなのか。工藤氏は先進国の政策金利を並べて見せました。

国・地域 政策金利(放送時点)
米国 約4%
イギリス 3.75%
ユーロ圏 2.5%
日本 1.25%
スイス 0%

工藤:スイスは0%です。これもキャリートレードが円からスイスフランにシフトする1つの要因なのは間違いありません。またスイスは永世中立国という、先進国の中でも特別な存在です。どの経済グループにも属しておらず、他の国の経済政策に左右されず、独自の経済政策を取っています。

実際、値動きにもその変化が表れているといいます。

工藤:スイスフラン円で見るとよくわからないんですけれど、ドルスイスフランで直近の値動きを確認していただければ一目瞭然です。今年は0.78ぐらいから0.82ぐらいと右肩上がりで、ドルに対してスイスフランは売られています。もちろん現在はどの通貨に対してもドルが強いので、割り引いて考える必要はあると思います。

スイスキャリーに潜む2つのリスク

ここからが工藤氏の解説の核心です。円キャリーとは異なる、スイスキャリー特有のリスクが2つあるといいます。

リスク①:流動性の小ささ

工藤:1つは、スイスフランは円と比べた場合、圧倒的に取引金額、つまり流動性が少ない通貨です。2025年のBISサーベイで見てみますと、日本円は1日あたり1兆6,000億ドルの取引金額ですが、スイスフランは1日あたり6,100億ドルと、取引金額では38%ぐらいです。従って、スイスキャリーの規模があまりにも大きくなりすぎると、破綻するリスクがあります。

通貨 1日あたり取引金額(2025年BIS調査)
日本円 約1兆6,000億ドル
スイスフラン 約6,100億ドル(円の約38%)

📌 用語解説:流動性とBISサーベイとは

流動性とは、その通貨がどれだけ大量に、スムーズに売買されているかの度合い。流動性が低い通貨に大量のポジションが積み上がると、いざ手仕舞う(巻き戻す)ときに買い手が足りず、価格が急激に飛びやすい。BISサーベイは国際決済銀行(BIS)が3年ごとに行う世界の外為取引の調査で、通貨ごとの取引規模を知る代表的なデータ。

リスク②:突然の政策転換(スイスフランショックの記憶)

工藤:また先ほどお話しした通り、独自の経済政策を行っているため、突然前触れもなく方向転換する可能性があります。2015年1月15日、ユーロスイスフランで1.20の下限をスイス中銀が突然撤廃して、一瞬でスイスフランの値段が30%以上跳ね上がったスイスフランショックは、私の為替人生の中でも一番ショッキングな出来事です。

📌 用語解説:スイスフランショック(2015年)とは

スイス国立銀行(中央銀行)は2011年から、自国通貨高を防ぐため「1ユーロ=1.20スイスフランより円高ならぬフラン高にはさせない」という上限(ユーロスイスフランの下限)を設けて介入を続けていた。2015年1月15日、これを何の予告もなく撤廃。スイスフランは数分で30%以上急騰し、スイスフラン売りのポジションを持っていた投資家や一部のFX業者が巨額の損失を被った。「中央銀行の約束は永遠ではない」ことを市場に刻み込んだ事件。

スイスフランは「ドルスイス」「ユーロスイス」で見る

最後に工藤氏は、スイスフランの値動きを見るときのコツを伝えました。

工藤:スイスフランを見られる場合は、スイスフラン円で見るとドルの動きに吸収されて、スイスフラン自体の値動きが見えにくくなります。ドルスイスフラン、もしくはユーロスイスフランの値動きをモニターされると良いと思います。

クロス円(円絡みの通貨ペア)だけを見ていると、本当の資金の流れを見誤る。調達通貨の地殻変動は、ドルスイス・ユーロスイスのチャートにこそ表れるというわけです。

📌 投資視点まとめ

  • 日銀の政策金利は1.25%に。金利差は残るが、当局の円安阻止姿勢で円キャリーのリスクは上昇
  • スワップで稼いでも、一度の円高で吹き飛ぶ。「安心してオーバーナイトできない」環境に
  • 政策金利0%のスイスフランが、新たな調達通貨として売られている(ドルスイスは0.78→0.82)
  • スイスフランの取引規模は円の約38%。キャリーが膨らみすぎると巻き戻し時に急変動しやすい
  • 2015年のスイスフランショックのように、独自政策ゆえの突然の方向転換リスクがある
  • スイスフランの実勢はスイスフラン円ではなく、ドルスイス・ユーロスイスで見る

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フィリップ・キャピタル証券からのお知らせ

フィリップ・キャピタル証券は、2026年8月24日をもって社名を「フィリップ証券株式会社」から変更しました。長年培ってきた信頼・誠実さ・専門性を礎に、証券会社という既存の枠組みにとどまることなく、世界と未来をつなぐ金融のパートナーとして進化を続けます。「あなたとともに次のステージへ。ユアパートナー・イン・ファイナンス」

フィリップ・キャピタル証券が提供する金融商品は、投資元本以上の損失が生じる恐れがあるものを含みます。契約締結前交付書面または目論見書をよくご理解の上、お取引ください。フィリップ・キャピタル証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第127号

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後半テーマ:ユーロの背景と今後のポイント——フランス財政危機をロンドンから読む

「これは起きると前から言っていた」——毎年10月の予算審査

後半はロンドン在住のFXトレーダー・松崎美子氏が登場。急騰するフランス国債利回りとユーロの現状について、松崎氏はまずこう切り出しました。

松崎:フランスの財政危機に関しては、個人的にはるか前から、これが起きるというのはセミナーでもずっとお話ししていました。どうしてかというと、2009年のギリシャ債務危機以降、各国は翌年度の予算案を必ず10月15日までに欧州委員会に提出して、欧州委員会がOKと言った予算案のみ翌年度に実施可能になるんですね。

その審査で、フランスはすでに「落第」していたといいます。

松崎:フランスの場合は2024年に、イタリアやポルトガルと一緒に、赤字が多すぎてダメですよという落第のスタンプを押されてしまったんです。それから5年かけて2029年までに、マーストリヒト条約の財政赤字3%、公的債務の対GDP比60%以内に戻すという約束をしています。これは法律上の約束です。しかし全く逆の方向に行ってしまって、どんどん赤字が増えているんです。

📌 用語解説:マーストリヒト条約の財政基準と過剰赤字手続きとは

ユーロ圏の国は、財政赤字をGDP比3%以内、政府債務をGDP比60%以内に抑えることが条約で求められている。基準を大きく超えた国は欧州委員会から「過剰赤字手続き(EDP)」の対象とされ、期限付きの是正計画を約束させられる。松崎氏の言う「落第のスタンプ」がこれにあたる。フランスは2024年にこの手続きの対象となった。

なぜフランスだけが立て直せないのか——ハングパーラメント

イタリアやポルトガルと同じ落第生なのに、なぜフランスだけが抜け出せないのか。松崎氏の答えは「政治」でした。

松崎:政治がしっかりしていないんです。落第点を押された2024年に、マクロン大統領が突然解散総選挙に打って出て、最終的に失敗して、どこも与党がないハングパーラメントのまま今までずっと来ています。なので大きな決断はすべて、憲法49条3項というところを使って、議会を通さずに強行採決するしかない状況なんですね。

📌 用語解説:ハングパーラメントと憲法49条3項とは

ハングパーラメント(宙づり議会)は、どの政党も単独で過半数を持たない議会のこと。法案や予算がなかなか通らず、政治が停滞しやすい。フランス憲法49条3項は、政府が議会の採決を経ずに法案を成立させられる強力な条項で、代わりに内閣不信任案の対象となる。乱用すれば政権の正当性が揺らぐ「最後の手段」でもある。

そして、その状況も限界に近づいているといいます。

松崎:ただ、それもさすがに来年4月の大統領選挙に向けて、極右のルペン氏がどんどん発言を強めてきて、政治不安と財政不安が重なっています。ギリシャと比べると、フランスは国が大きいので、ここが倒れたら誰も救済できないなということで、ユーロに対する信頼が一気に剥げてきたという感じだと思います。

12月31日までの攻防——「ヨーロッパの人はみんな知っていた」

予算案は今、どのくらい追い込まれているのでしょうか。

松崎:怖いんですけど、これは12月31日まで続くんです。逆に言えば、12月31日までに欧州委員会が合格点を出さないと、前年度の残ったお金でやりくりすることになる。これは今年もうすでにフランスで起きていて、昨年の今ごろは結局12月31日まで決まらず、1月になって前年度のお金でどうにかやりくりして、最終的に欧州委員会との間で「2029年までには必ず達成してください」ということで、とりあえずうまくいったように見せかけたんです。

松崎:当たり前ですけど、土台が崩れたままずっと来ていて、政治も一向に改善しない。だからヨーロッパに住んでいる人は、10月に入ったらこれが起きるよというのを全部知っていたんですよ。

日本の投資マネーはどう動くか

松崎氏は、日本の機関投資家への影響にも触れました。

松崎:日本の大手のアセットマネジメントは、フランスから引き上げたと聞いています。日本の投資顧問などは、フランスの比率がものすごく大きいんです。だから下手をすると、ここからまだ引き上げが出てくる可能性はあるかもしれません。

ただし、それがすぐに円高につながるとは限らないといいます。

松崎:引き上げるときに全部日本に戻さず、一応ドイツにプールしておこうという動きであれば、ユーロからユーロなので、為替ではユーロ円の売りにはならないんです。日本に持って帰ってきたら、ものすごい円高になってしまうので、多分そこまでのリスクは取らないと思うんですけど。ただ、ちょっと怖い局面には入っていると思います。

ECBは助けられない——TPIが使えない理由

フランス国債が売られ続けたとき、欧州中央銀行(ECB)は支えに入れるのか。松崎氏は否定的です。

松崎:全く同じことが以前イタリアで起きて、そのときECBはTPIという、おかしなことになったら私たちが支えますという仕組みを発表しました。ただTPIが使えるのは、例えば風評被害のように、自分には何の非もないのに国債市場で勝手に売られているような場合なんです。フランスの場合は政治リスクと、悪く言えば自分で蒔いた種。ファンダメンタルズ的にそもそも落第点で、債務赤字の落第生のハンコを2024年に押されているので、ECBからサポートしてもらう資格がもうないんです。

📌 用語解説:TPI(伝達保護措置)とは

TPI(Transmission Protection Instrument)は、ECBが2022年に導入した国債市場の安定化策。ファンダメンタルズに見合わない無秩序な国債売りが起きた国に対し、ECBが国債を買い入れて利回りの急騰を抑える。ただし発動には「EUの財政ルールを守っている」などの条件があり、過剰赤字手続きの対象国が自らの財政運営の失敗で売られている場合は、原則として対象外となる。

最終的にはECBが例外的な措置をとる可能性もゼロではないとしつつ、松崎氏はルペン氏が求めたような金融緩和については「絶対にしない」と断言しました。

松崎:ECBが金利を下げて、もっと借り入れを簡単にしてもらうということは、絶対にしません。やってしまったら中央銀行の信用がなくなってしまうので。そんなに簡単に救済をずっとしていたら、頑張っている国が「じゃあ僕たちは何のために頑張っているの」となってモラルハザードになってしまいますし、財政ファイナンスにもなってしまう。そこは無理ですね。

ロンドンのガソリンは1リットル400円——インフレのリアル

インフレの状況についても、現地ならではの生々しい証言がありました。

松崎:インフレは収まらないですね。中東情勢が2027年の年末ぐらいまで続くという前提で、ヨーロッパもイギリスも今いるんです。だからあと1年以上。ロンドンでは今、ガソリンが1リットル400円です。補助金などでこういう形でサポートしているのは日本だけなんですよ。それがいい悪いとは私は何も申しませんが、日本はもうちょっと世界の現状を見たほうがいいんじゃないかなと思います。

フランスでは財政赤字で教育予算が逼迫し、全土で高校生のデモが広がっているとも報じられています。松崎氏は「イギリスでも以前は暴動が起きていた。起こしたくなる気持ちはわかるくらい、もう切羽詰まっている」と語りました。

📌 過去放送との文脈リンク

松崎氏は4/23放送でも出演し、「ドル離れの受け皿としてのユーロ高」と「ロンドンのガソリン1リットル400円」を語っていました。半年前は「ドルの代わりにユーロが買われる」局面だったのが、今回は「フランス財政危機でユーロへの信頼が剥がれる」局面へと転換しています。そして先週10/1放送では山中康司氏が、1年以上動かなかったユーロドルの下放れと「ドル高の矛先が円からユーロへ移っている」構図を指摘しました。テクニカル(山中氏)とファンダメンタルズ(松崎氏)の両面から、ユーロ安の流れが裏付けられた形です。

2027年大統領選——「本当の終わりの始まり」か

来年の大統領選の政治リスクはどのくらい深刻なのか。松崎氏の答えは強烈でした。

松崎:1億倍ぐらいあると思いますよ。私は5月にアメリカへ旅行に行く予定を、今キャンセルしようと思っているくらいです。決選投票で5月に大統領が決まるんですけど、そこからが本当の終わりの始まりじゃないかなと。特にルペン氏が勝ってしまうと、今は票が欲しいので「EUから出ません、ユーロは続けます」と言っていますが、少し時間が経てば、悪く言えば化けの皮が剥がれるんじゃないかと。

10月6日にルペン氏は、歳出削減で財政赤字を数年以内にGDP比3%未満に抑えるという経済財政政策を発表しました。しかし松崎氏は、英語とフランス語のルモンド紙を読み込んだうえで「財源がまったくはっきりしていない」と指摘します。

松崎:それでも支持率は高いんですよ。みなさん、ものすごく不満があるんですよね。フランスだけでなく、すべての国が左なり右なり、ポピュリズム政党に走ってしまう。イギリスもそうでした。

📌 用語解説:ポピュリズム政党とは

既存のエリート層や体制への不満を背景に、「普通の人々」の味方を掲げて支持を集める政党のこと。右派(移民規制・反EUなど)にも左派(大規模な再分配など)にも存在する。分かりやすい公約で支持を広げる一方、財源の裏付けが乏しい政策を掲げることも多く、財政規律の緩みを警戒した市場では国債や通貨が売られやすい。

為替戦略——ユーロは売り、でも一番怖いのは円高

最後に、為替の戦略をどう立てればいいのか。松崎氏は意外な答えで締めくくりました。

松崎:ユーロはとりあえず売りでいいと思うんですが、ドルがどうして買われているのか、私はよく分からなくて。正直言って、トランプさんの国の通貨を買いたいとも思わないので、選択がすごく難しくなっています。

そして、ユーロ以上に警戒しているのが円だといいます。

松崎:日本の場合、私はやはり、万が一AIバブルが弾けた場合、先ほど工藤さんがおっしゃったキャリートレードのアンワインド(巻き戻し)が起きると思うんです。

誰も正確な数字が分からないし、デリバティブなども関わってきているので、これが崩れたら恐ろしい円高になると思います。ただ今はまだ健康を保っています。だから今私が一番怖いのは、AIバブルが弾けたあとの、ユーロよりも何よりも円高リスクなんです。

松崎:ユーロを追っているときに急にドル売りになってしまうと、今度はアンワインドが出るので、かなりボラティリティの激しい1年になると思います。

前半の工藤氏が語った「キャリートレードの変化」と、後半の松崎氏が恐れる「キャリーの巻き戻しによる円高」。番組の前後半が、1本の線でつながった瞬間でした。

📌 投資視点まとめ

  • ユーロ圏の予算審査は毎年10月15日提出、12月31日までが攻防。フランスは2024年から「落第」状態
  • ハングパーラメントで財政再建が進まず、憲法49条3項での強行採決が常態化
  • フランスは過剰赤字手続きの対象のため、ECBのTPIによる支援を受けにくい
  • 日本の機関投資家のフランス資金引き上げは、ドイツへ移すならユーロ円売りにはならない
  • 2027年大統領選(5月決選)はユーロ最大の政治リスク。ポピュリズム台頭に要警戒
  • 松崎氏の戦略は「ユーロは売り」。ただし最大の警戒はAIバブル崩壊時のキャリー巻き戻しによる急激な円高

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まとめ:キャリーの主役交代と、巻き戻しのリスク——2つの視点が1本につながる

今回の放送は、前半と後半が見事につながる回でした。

前半の工藤氏が描いたのは、キャリートレードの主役交代です。日銀の利上げと当局の円安阻止姿勢によって、円は「安心して売れる通貨」ではなくなりました。代わりに政策金利0%のスイスフランが調達通貨として売られています。しかしスイスフランは流動性が円の4割弱しかなく、2015年のように突然の政策転換もありうる。新しい主役にも、新しいリスクがついて回ります。

後半の松崎氏が描いたのは、ユーロを揺るがすフランスの財政・政治危機です。予算をめぐる12月末までの攻防、ECBの支援を受けにくいフランスの立場、2027年大統領選というより大きな火種。ユーロは当面売りという見立ての一方で、松崎氏が「一番怖い」と語ったのは、AIバブルが弾けたときのキャリー巻き戻しによる円高でした。

キャリーは、積み上がるときは静かで、崩れるときは一瞬です。どの通貨が売られ、どこにポジションが溜まっているのか。その地図を頭に入れておくことが、ボラティリティの激しい1年を乗り切るための備えになります。

「投資がわかると意識が変わる。意識が変わると世界が変わる。」

これほどまでに激動し、予測不可能な相場環境において、フィリップ・キャピタル証券の高機能プラットフォーム「MT5」による自動売買(EA)を活用し、システムに冷静な取引を任せるのが、これからの「投資の旅(ジャーニー)」をサバイブする鉄則です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ円キャリートレードのリスクが高まっているのですか?

A. 日銀の政策金利が1.25%まで上がり、かつての「日銀は利上げしない」という前提が崩れたためです。さらに日米の当局者が協調して円安を阻止する姿勢を示しているため、スワップポイントで積み上げた利益が、一度の円高で吹き飛ぶリスクが大きくなっています。工藤氏はこれを「安心してオーバーナイトできない状況」と表現しています。

Q2. スイスフランが新しい調達通貨になっているのはなぜですか?

A. スイスの政策金利が先進国で唯一の0%であることが大きな理由です。また永世中立国として独自の経済政策をとっており、日本のように他国の当局と協調して介入する構図になりにくい面もあります。実際、ドルスイスフランは今年0.78前後から0.82前後へと、スイスフラン安方向に動いています。

Q3. スイスフラン売りのポジションを持つときの注意点は?

A. 工藤氏は2つのリスクを挙げています。①スイスフランの取引規模は円の約38%しかなく、キャリーが膨らみすぎると巻き戻し時に急変動しやすいこと、②2015年のスイスフランショックのように、スイス中銀が予告なく政策を転換する可能性があること、です。値動きはスイスフラン円ではなく、ドルスイス・ユーロスイスで確認するのがおすすめとされています。

Q4. フランスの財政問題はユーロにどう影響しますか?

A. 松崎氏によれば、フランスは2024年にEUの財政基準で「落第」とされたまま改善せず、ハングパーラメントで政治も停滞しています。国の規模が大きいため「倒れたら誰も救えない」という不安からユーロへの信頼が剥がれつつあります。予算案の攻防は12月31日まで続き、2027年の大統領選も控えているため、ユーロには当面の重しになると見られています。

Q5. ECBはフランス国債を支えないのですか?

A. ECBには国債市場の混乱を抑えるTPIという仕組みがありますが、対象は「ファンダメンタルズに見合わない売り」に限られます。フランスは過剰赤字手続きの対象で、自らの財政運営が原因で売られているため、原則として支援の資格がないと松崎氏は解説しています。また、金利を下げて借り入れを助けるような対応は、モラルハザードや財政ファイナンスにつながるため、ECBは行わないとの見方です。

Q6. 松崎氏が「一番怖い」と言う円高リスクとは?

A. AIバブルが崩壊した場合に、世界中に積み上がったキャリートレードが一斉に巻き戻され、調達通貨だった円が急激に買い戻されるリスクです。デリバティブも絡み、規模が誰にも正確に分からないため、崩れたときの円高は「恐ろしい」ものになりうると松崎氏は警告しています。今は落ち着いていても、ボラティリティの激しい1年になる前提で備えることが大切です。

Q7. フィリップ・キャピタル証券でスイスフランやユーロの取引はできますか?

A. できます。MT5口座では、ドルスイスフランやユーロスイスフラン、ユーロドルなどの主要通貨ペアのFX取引が可能です。工藤氏が勧める「ドルスイス・ユーロスイスでスイスフランを見る」方法も、MT5のチャートで実践できます。番組で学んだキャリートレードの視点を、リスク管理とあわせて活かしてください。詳細は公式サイトまたは営業スタッフへお問い合わせください。

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