2025年も年の瀬。マーケットは「日銀は本当に動くのか?」という金利の話題と、世界各地のクリスマス商戦が交錯する季節です。
今週の『ファイナンシャル・ジャーニー』はまさにその2つをつなぐ内容でした。
前半はフィリップ証券 リサーチ部の三角 友幸さんが、「中立金利」というキーワードから日本銀行の政策スタンスを読み解き、後半はエコノミスト/BRICs経済研究所代表の門倉 貴史さんが、アメリカ・日本・フィリピンのクリスマス商戦を素材に、世界消費の“いま”を語ってくれました。
金利と消費、一見バラバラなテーマに見えて、「お金の流れをどうデザインするか」という一点で、実はきれいにつながってきます。
この記事では、番組の空気感を残しつつ、投資のヒントになるポイントを整理していきます。

🎙 番組概要
番組名:ファイナンシャル・ジャーニー
放送日時:毎週木曜日 8:30〜8:49
放送局:ラジオNIKKEI第1
提供:フィリップ証券
パーソナリティ:浜田 節子
コメンテーター:
・三角 友幸氏(フィリップ証券 リサーチ部) ・門倉 貴史氏(エコノミスト/BRICs経済研究所代表)

「わかる、かわる」をキーワードに、まるで世界を旅するようにマーケット全体の動向、アジア・アメリカを中心とする国際情勢、様々な金融商品の特徴まで、その日の取引に役立つ幅広い情報を、各分野の専門家が解りやすく解説します。
投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」2025.12.11放送
パーソナリティは浜田節子
コメンテーターは門倉 貴史氏(エコノミスト/BRICs経済研究所代表)、三角 友幸氏(フィリップ証券 リサーチ部)

日銀の「中立金利」とは何か:利上げ観測の裏側を読む

「年内利上げなさそう」から一転、12月に浮上した利上げ観測
浜田さんが問いかけます。
「前回11月の放送では、“日銀はそう簡単には利上げしないだろう”というトーンでしたよね。
それが12月に入って、急に“年内にも利上げか?”という観測が出てきました。何が変わったのでしょう?」
三角さんは静かに振り返ります。
- 4〜9月期の実質GDP速報値は、6四半期ぶりのマイナス成長
- 普通なら「景気が弱い=利上げ延期要因」として受け止められてもおかしくない状況
それでもマーケットが「日銀は動くかもしれない」と感じ始めた背景として、三角さんは、11月28日に閣議決定された「18.3兆円の2025年度補正予算」を挙げました。
- 補正予算の規模:18.3兆円
- そのうち約6割に相当する11.69兆円が“国債の追加発行”で賄われる決定
- 政府の財政リスク=将来のインフレ圧力、そして円安圧力にもつながる可能性
「インフレは単に金利で決まる“お金だけの現象”ではありません。
生産能力に対してどれだけ消費が膨らむか、というバランスで決まる側面も大きい。
この規模の財政支出が続くなら、日銀としても“円安をこれ以上放置できない”というメッセージを
金利のかたちで出さざるを得ないわけです。」
マクロの教科書的な話が、補正予算という“現実の政治”と、「ドル円はどこまで行くのか」という投資家の肌感覚と、一本の線でつながっていきます。
「アクセルをうまく緩めていく」=中立金利という考え方
話題は、12月1日の日銀・名古屋支店での講演へ。
植田総裁は、政策金利を引き上げるとしても
- 「景気にブレーキをかけるための利上げではない」
- 「アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」
と表現しました。
浜田さんが「この言い回し、どう理解したらいいのでしょう?」と問うと、
「以前、この番組でも“今日の消費と明日の消費をどう配分するか”という文脈で、金利の話をしましたよね。私たちは、貯金すればどれくらいリターンが得られるかを頭のどこかで計算しながら、“今使うか、あとで使うか”を決めています。」
その上で、こう説明します。
- 消費を選んでも、貯蓄を選んでも「どちらでもいい」と感じられる金利水準がある
- その水準なら、景気もインフレも加速も減速もしない
- 経済学では、この金利を「中立金利」と呼ぶ
つまり、
- 政策金利 < 中立金利:景気を“後押ししている”=緩和的
- 政策金利 > 中立金利:景気を“冷やしている”=引き締め的
「アクセルを踏んでいた足を、少しだけ緩める。
でもブレーキにはまだ足を乗せていない――そんなイメージですね。」
中立金利は“見えない金利”——どうやって推計するのか
続いて浜田さんが素朴な疑問を投げます。
「金利って、政策金利とか国債利回りとか“目に見える数字”で報道されますよね。
中立金利って、どこを見れば分かるんでしょう?」
ここからは、少しディープな経済学の世界へ。
三角さんによると、中立金利には
- 名目の中立金利
- そこからインフレ率を引いた「実質の中立金利」=自然利子率
という2種類があり、いずれにしても「直接は観測できない数字」です。
推計方法として紹介されたのは、おおまかに3つ。
- 実質金利の長期推移から“トレンド成分”だけを統計的に抽出する方法
- IS曲線(需要と金利の関係)やフィリップス曲線(雇用とインフレの関係)など、 マクロ経済モデルの“方程式”から、需給ギャップがゼロになる金利を逆算する方法
- 人口動態や金融仲介機能など、ミクロな構造要因から積み上げる方法
「どれも一長一短で、簡単に“この数字です”とは言えません。日銀もワーキングペーパーなどでレンジを示すに留めています。」
既存の研究では、
- 日本の名目中立金利:おおよそ1.0〜2.5%
- 自然利子率(実質):▲0.5〜+1.0%程度
といった範囲で動いていると推計されてきました。
「例えばインフレ目標を1〜2%と置けば、経済の“均衡的な名目金利”も1%台前半が妥当という議論になります。」
つまり、今の“ゼロ金利に限りなく近い世界”は、本来の中立水準から見ると、まだかなり緩和的な状態にある――
それが三角さんの見立てです。
中立金利を“ガイダンス”として示す意図
名古屋での講演後、植田総裁は記者会見で
と発言しています。
浜田さんが「これは市場への“道しるべ”ということでしょうか?」と聞くと、
三角さんは2つのポイントを挙げました。
- 利上げ局面で「どこまで上げるか」の終点(ターミナルレート)を、ある程度示すため
- FRBがターミナルレートの分布をドットチャートで示すのと同じ発想
- 「どこまでも上がり続けるのでは?」という市場の不安を抑える狙い
- 「利上げ=バブル潰し」「アベノミクスの否定」といった誤解を避けるため
- あくまで“ルールベースで、経済状況に応じて粛々と動く”という姿勢を明示
- 中立金利という“ものさし”を公開することで、感情的な批判をかわす
さらに三角さんは、こんな注釈も添えました。
「これまでの日銀の推計は、どうしてもコロナ前後やウクライナ侵攻、AIによる産業構造変化といった、直近の大きなショックを十分に織り込めていません。
これから中立金利の再推計が進めば、“思っていたより高かった”という結果が出る可能性もあります。」
つまり、将来の日本の金利は、
- かつての“ゼロ金利が半永久的に続く世界”よりは、
- もう少し“金利がある”世界に近づいていくかもしれない――
そんな予感をにじませつつ、三角さんはこう締めくくりました。
「政府の拡張財政に対して忖度しつつも、
“円安をこれ以上加速させない”というタカ派的な姿勢は、依然として続いていると考えています。」
個人投資家へのヒント:金利・為替・株式をどう見るか
三角さんの話を、個人投資家目線で整理すると、ざっくり次のようなポイントが見えてきます。
- 日本の金利は“ゼロから一歩進む”可能性が高まりつつある
- ただし、中立金利を大きく上回るほどには上げにくい(景気への配慮)
- 補正予算などの拡張財政は「円安・インフレ要因」であり続ける
この前提に立つと、投資戦略としては例えば:
- 「ゆっくり上がる日本の金利 × 財政リスク × 円安抑制」という組み合わせを どうポートフォリオに織り込むか
- 日本株では、金利上昇メリットを受けやすい金融株(銀行・保険)と、 内需ディフェンシブ(電力・通信・インフラ)をどう配分するか
- FXでは、「利下げに向かう米国」と「ようやく動き始めた日本」という、 金利差縮小のシナリオをどう描くか
「日銀がどこまで上げるか」だけでなく、「どのペースで、どの終点を目指すのか」という“ストーリー”を持てるかどうかが、2026年に向けた大きな分かれ目になりそうです。

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世界を駆けるクリスマス商戦:アメリカ・日本・フィリピンの“温度差”

後半は、門倉 貴史さんが電話で登場。
テーマは「世界のクリスマス商戦」、なかでもフィリピンのクリスマス文化です。
アメリカのクリスマス商戦:小売売上はついに“1兆ドル超え”へ
浜田さんが切り出します。
「世界最大の消費市場アメリカでは、今年のクリスマス商戦はどうなりそうでしょう?」
門倉さんの説明はこうです。
- アメリカでは、11月末ごろからクリスマスに向けて消費が加速
- 小売業者の年間売上の約2割が、この時期に集中
- 全米小売業協会の予測では、今年の年末商戦の小売売上高は前年比3.7〜4.2%増
- 水準としては、初めて1兆ドルを超え、1兆100〜1兆200億ドルに達する見込み
「個人消費の底堅さは、日本企業にもチャンスです。
アメリカ向けに輸出している企業や、現地で店舗・ECを展開している企業には追い風になります。」
米国株や日本の輸出企業に投資している人にとっては、“クリスマス商戦=決算に効いてくる重要イベント”であることを、あらためて意識させられる内容でした。
日本のクリスマス市場:9,800億円の“プレゼントとおうちパーティ”
続いて浜田さんは日本について質問します。
「日本のクリスマス商戦の市場規模は、どれくらいなのでしょう?」
門倉さんによると、
- 調査会社インテージの推計では、日本のクリスマス関連市場は年間9,800億円規模
- クリスマスの主なイベントは
- プレゼントの購入
- 自宅でのパーティ(ケーキ・チキン・スイーツなどの需要)
「ハロウィンや“推し活”の隆盛で、イベント消費が分散しているとはいえ、クリスマスは依然として強力なシーズナル需要です。」
日本株でいえば、
- EC事業者
- 百貨店・専門店
- 食品・外食
- 玩具・ホビー
といったセクターをチェックしておきたいところです。
アジアのクリスマス:フィリピンは「世界一長いシーズン」
話題はアジアへと移ります。
浜田さん
「アジアでもクリスマスを祝う国は増えていますよね。そのなかでも、もっともクリスマスが根付いている国はどこでしょう?」
その理由は、
- ASEANで唯一のキリスト教国(カトリック83%、その他キリスト教徒10%)
- 300年以上スペインの植民地だった歴史的な背景
そして何より特徴的なのが、“クリスマスの長さ”です。
- フィリピンの主要都市では、9月から12月まで街中がクリスマスムード
- 9月〜12月の“BER months”(September, October, November, December)と呼ばれる期間が 丸ごとクリスマスシーズン
- 正確には、翌年1月6日の「東方三賢者の日」の儀礼まで続く
- 結果として「4カ月+1週間」、1年の約3分の1がクリスマスシーズン
「世界で一番長くクリスマスを祝う国」と言われる所以です。
プレゼント文化:サンタではなく“家族と会社”が主役
日本のクリスマスでは「サンタクロースが子どもにプレゼントを持ってくる」という物語が定番ですが、
フィリピンは少し違います。
- 家族の絆が非常に重視される
- クリスマスは“家族全員が集まって過ごす”ことが最重要
- プレゼントも、家族一人ひとりに用意するのが一般的
- 子ども:おもちゃ
- 大人:ファッション、家庭用品など
さらに企業文化にも特徴があります。
- 多くの企業が、ボーナスとは別にクリスマスギフトを従業員に贈る
- 現金よりも「ギフト」のほうがモチベーションが上がると言われている
- 場合によっては事前にリクエストを聞いてから贈ることも
「ギフトを通じて、会社と従業員の関係性を深める“インターナル・マーケティング”のような側面もありますね。」
と、門倉さんは指摘します。
日本製品×越境EC:フィリピン需要をどう捉えるか
ここから、日本の投資家にとって重要なポイントが見えてきます。
- フィリピンでは日本製品への信頼が非常に高い
- 特に人気なのは、美容・スキンケアの分野
- 資生堂やSK-IIといったブランドは、フィリピンの女性ならほとんどが知っている
- 高価格帯でも「品質が伴っている」という認識から、クリスマスの“特別なギフト”として選ばれやすい
- 家電やファッションも人気で、日本への旅行ついでに購入するケースも増加
「ポイントは、4カ月以上もクリスマスシーズンが続くことです。9月ごろから、日本のECサイトへの注文がじわじわと増えていきます。つまり、日本の企業にとっては“第4四半期だけの一発勝負”ではなく、秋口から続くロングテールの需要として捉える視点が必要になります。」
日本株・日本発ECの投資家にとってのヒントとしては、
- 越境ECに力を入れている化粧品・家電・ファッション企業
- フィリピンや東南アジア向けのマーケティングを展開している企業
- 訪日客(インバウンド)とオンライン販売を組み合わせている企業
といった銘柄群が、クリスマスシーズンの“隠れた恩恵組”になる可能性があります。
まとめ:金利と消費、“2つの温度”をポートフォリオにどう反映させるか

今週の『ファイナンシャル・ジャーニー』を一言でまとめるなら、
「中央銀行の“見えない金利”と、フィリピンの“見える消費”をどう投資に落とし込むか」
という回でした。
整理すると、学べたポイントはおおまかに次の3つです。
- 日銀の「中立金利」
- 中立金利は、景気もインフレも加速も減速もしない“ちょうどいい金利”
- 政策金利がそれを下回る限り、金融環境は緩和的であり続ける
- 補正予算などの拡張財政が続くなか、 日銀は“円安を抑えるためのタカ派”として、少しずつアクセルを緩め始めている
- 世界のクリスマス商戦
- アメリカ:年末商戦は1兆ドル超え、日本企業にも追い風
- 日本:9,800億円規模のクリスマス市場は、依然として小売・ECにとって重要な稼ぎ時
- フィリピン:4カ月+1週間にわたる“超ロングクリスマス”が、 日本製コスメや家電、ファッションに継続的な需要を生み出している
- 個人投資家への具体的なヒント
- 金利:
- 日本の金利は“ゼロからの卒業”フェーズに入りつつある
- 中立金利という“終点”を意識しながら、JGB・金融株・円相場をウォッチ
- 株式:
- 金融やインフラなど、金利上昇に比較的強いセクター
- クリスマス商戦で恩恵を受ける小売・EC・化粧品・家電
- フィリピンや東南アジア向け越境ECに強みを持つ企業
- FX:
- 「利下げ方向の米国」と「じわじわ利上げ方向の日本」という構図の中で、 ドル円・クロス円のボラティリティも意識
- 金利:
金利と消費、どちらか一方だけを追いかけるのではなく、
「お金の値段(金利)」と「お金の使い道(消費)」をセットで眺めることが、
これからの投資にはますます重要になっていきそうです。
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番組でも繰り返し強調されているように、
フィリップ証券は
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「金利の話も、世界消費の話も面白いけれど、具体的にどんな商品を選べばいいか分からない」という方は、
一度プロに相談しながら、自分なりの“ファイナンシャル・ジャーニー”を描いてみるのも良いかもしれません。
次回の放送では、また違った角度から“お金の旅”が続いていきます。
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