🎙 番組概要
番組名:ファイナンシャル・ジャーニー
放送日時:毎週木曜日 8:30〜8:49
放送局:ラジオNIKKEI第1
提供:フィリップ証券
出演者(今回放送分):
脇本 源一(フィリップ証券 取締役 常務執行役員/投資銀行本部長)
上田 宗則(北浜経営コンサルティング 代表取締役/公認会計士)
進行:浜田節子
今回取り上げられたのは、「新規上場企業の不正会計と、その背景」 です。
2025年8月31日、AI議事録サービスを提供する オルツ社 が、不正会計を理由に東証グロース市場から上場廃止となりました。
同社は2024年10月に上場したばかり。わずか10か月余りでの市場退場という異例のスピードに、市場関係者や個人投資家の間で衝撃が広がっています。
前半ではフィリップ証券の脇本源一さんが登場。
「なぜ新規上場を目指す企業で粉飾が起きてしまうのか?」
「その背景にある、日本独特の“IPOの壁”とは?」
について解説しました。

「わかる、かわる」をキーワードに、まるで世界を旅するようにマーケット全体の動向、アジア・アメリカを中心とする国際情勢、様々な金融商品の特徴まで、その日の取引に役立つ幅広い情報を、各分野の専門家が解りやすく解説します。
投資がわかると意識がかわる!「ファイナンシャル・ジャーニー」2025.09.18放送
パーソナリティは浜田節子
コメンテーターは門倉 貴史氏(エコノミスト/BRICs経済研究所代表)、永堀 真氏(フィリップ証券 代表取締役社長)

IPOと粉飾会計

浜田
「脇本さん、本日もよろしくお願いいたします。
さっそくですが、人工知能開発を手がけるオルツが不正会計を理由に上場廃止となりました。
これは市場にとっても大きなニュースでしたね。どうして、こうした事例が繰り返されてしまうのでしょうか?」
脇本
「おはようございます。そうですね、非常に残念な出来事でした。背景には、やはり 日本のIPOのハードルの高さ があると思います。
日本では上場を希望しても、実際に上場できるのは100社に1社程度。つまり、ほとんどの会社が夢半ばで諦めざるを得ない。非常に狭き門なんです。」
浜田
「100社に1社…。想像以上に厳しい数字ですね。」
脇本
「そうなんです。さらに上場準備には4〜5年、場合によっては10年近くかかるケースもあります。その間、常に“右肩上がりの業績”を維持しないといけない。もし一度でも成長が止まったり赤字を出したりすると、上場が延期になってしまう。延期になると、その後に再挑戦するのは極めて難しいんです。」
浜田
「そうすると、経営者としては何が何でも“数字を作らなければならない”と追い込まれてしまうわけですね。」
脇本
「その通りです。『あと少し利益が出れば…』という場面で、どうしても無理をしてしまう。結果的に粉飾へとつながってしまうケースが出てくるのです。実際、IPO審査で不合格になる理由のNo.1は“利益計画の妥当性”なんですよ。」
浜田
「利益計画…。つまり、会社が上場時に出す“1期目の予想利益”を背伸びしてしまう?」
脇本
「はい。新規上場企業は必ず『上場後最初の1年間の利益予想』を発表します。これを大きく見せようとして無理をする。
でも審査は厳しく、利益計画の妥当性が疑われれば、上場ははじかれてしまう。だから『少しだけ背伸びすればゴールに届く』と経営者が考えてしまうのです。」
浜田
「上場自体がゴール化してしまっているという問題もありますよね。」
脇本
「そうなんです。本来は上場してから成長し続けることが大切なのですが、日本では“上場に至ること”が目的化してしまう傾向が強い。
アメリカでは上場自体は比較的容易で、その後の実績が問われる。一方で日本は、上場までのハードルが非常に高く、上場が『夢の到達点』になってしまう。そこに無理が生じてしまうのです。」
浜田
「なるほど…。制度の構造が、不正を誘発する土壌を作っているということですね。」
脇本
「その通りです。さらに、株主やベンチャーキャピタルからの圧力も大きいんです。出資を受けていると、『いつ上場するのか?』『資金を回収できるのはいつか?』と迫られる。経営陣は数字を作るプレッシャーを二重三重に背負うことになります。」
浜田
「経営者はもちろん、投資家やVCもまた“上場”を強く意識している。そうした外部からの期待や圧力が、背伸びや粉飾を生みやすくしてしまうのですね。」
脇本
「はい。もちろん粉飾は言語道断ですが、背景にあるプレッシャーを理解しないと再発防止は難しいと思います。」
日本のIPOは世界でもトップクラスの難易度。
準備期間が長く、途中で業績が止まると上場延期・復活困難。
**利益計画の“背伸び”**が最大の不正リスク。
審査が利益予想に重きを置くため、数字を盛りたくなる構造。
「上場=ゴール」視の文化が、不正を誘発する温床に。
アメリカ・シンガポールのように「上場後の成長」を重視する仕組みとの対比が鮮明。
株主・VCからのプレッシャーも経営者を追い込む要因。
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🎧 上田宗則さんが語る「オルツ社の不正会計」

浜田
「ここからは、北浜経営コンサルティング代表取締役で公認会計士の 上田宗則 さんをお迎えしてお送りします。上田さん、本日はよろしくお願いいたします。」
上田
「よろしくお願いいたします。」
浜田
「先ほどは脇本さんに“なぜ新規上場企業が粉飾をしてしまうのか”という背景を伺いました。
ここからは実際の事例に入りたいと思います。
8月31日に上場廃止となった オルツ社、AI議事録の開発で注目された会社ですが、どのような不正が行われていたのでしょうか?」
上田
「はい。オルツ社は自社開発のAIを使って、自動で議事録を作成するサービスを提供していました。
2024年10月にグロース市場に上場したのですが、後の調査で 2021年から2024年の間に約119億円もの架空売上を計上していた ことが判明しました。
浜田
「4年間で9割が架空…。信じられない数字ですね。どのような手口だったのでしょうか?」
上田
「いわゆる 循環取引 です。複数の会社が結託し、実際には存在しない取引をあるかのように見せかける。オルツの場合は、自社・販売代理店・広告代理店の三社が共謀しました。
具体的には、オルツが“スーパーパートナー”と呼ぶ販売代理店にライセンスを一括販売したように装い売上を計上。しかし実際にはライセンスが発行された記録はなく、取引の実体は存在しなかったのです。
同時にオルツは広告代理店に架空の広告発注を行い、資金を代理店経由で販売代理店に戻す。
その販売代理店からオルツに“ライセンス料”として資金を戻す。こうして資金を循環させながら、帳簿上は売上が発生しているように見せかけていました。」
浜田
「つまり、お金がグルグル回っていただけということなんですね。」
上田
「はい。しかもこの循環取引の怖いところは、証憑がすべて揃ってしまうことです。
契約書、請求書、入金記録まで一通り揃っているので、監査法人が通常行う“商流突合”では不正を見抜けないんです。」
浜田
「なるほど…。取引先が実在していて、書類も整っているとなると、外からは不正に見えにくいですね。」
上田
「そうなんです。実際、この件では前任の監査法人が循環取引を疑ったものの、後任の監査法人に引き継がれる中で、オルツ側が表面的に取引を解消するなど虚偽説明を行い、最終的に“問題なし”と判断されてしまった。
主幹事証券、証券取引所、さらにVCも出資していましたが、監査法人が“適正”と判断したことで他の関係者も安心してしまったのだと思います。」
循環取引の特徴
契約書・請求書・入金/支払記録など証憑が揃っており、外見上は問題なし。
複数の事業者が共謀するため、個別の取引だけを見ても不正が分からない。
監査法人の限界
商流突合だけでは不正は見抜けない。
本来は「エンドユーザーに実際にサービスが届いたか」を確認する追加手続きが必要。
チェックポイント
特定の販売代理店への売上集中は注意サイン。
売上と広告費が同じ相手先で往復していないか。
監査法人の交代が頻繁に行われていないか。
浜田
「上田さん、非常に分かりやすい解説をありがとうございました。粉飾決算の実態を知ると、投資家にとっても“数字をそのまま信じる”ことの危うさがよく分かりますね。」
上田
「そうですね。投資家としては、開示資料の数字を見るだけでなく、その裏に“実体の伴うビジネスが存在しているか”を意識して確認していく必要があると思います。」
✅ 放送内容のまとめと投資のヒント
✔ 放送の要点
- 日本のIPOは極めて狭き門 → 上場準備は長期戦、常に右肩上がりを求められ、経営者に大きなプレッシャー。
- 利益計画の“背伸び”が不正の温床 → IPO審査で最も重視されるのは利益計画の妥当性。数字を盛ろうとする誘惑が生まれる。
- オルツの粉飾決算 → 4年間で約119億円もの架空売上。循環取引により資金を回し、契約書や入金記録を整えて“本物の取引”に見せかけた。
- 監査の限界と投資家の視点 → 書類が揃っていても安心はできない。実際にサービスが利用されているか、代理店への売上集中や広告費との循環など、数字の“質”を疑う姿勢が必要。
✔ 投資家が学ぶべきチェックポイント
- 特定の代理店に売上が偏っていないか。
- 売上と広告費が同じ系列企業で往復していないか。
- KPI(利用者数・継続率など)の実態が伴っているか。
- 監査法人の交代や会計方針変更が頻繁にないか。
👉 数字そのものよりも「数字の動線」を追うことで、不正やリスクを早めに察知できる可能性があります。
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